労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  エス・ウント・エー 
事件番号  東京地裁平成 7年(行ウ)第3号 
原告  エス・ウント・エー有限会社 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  全国労働組合総連合・全国一般労働組合東京地方本部・法律会計特許一般労働組合 
被告参加人  全国労働組合総連合・全国一般労働組合東京地方本部・法律会計特許一般労働組合ゾンデルホフ分会 
判決年月日  平成 9年10月29日 
判決区分  救済命令の一部取消し 
重要度   
事件概要  会社が、<1>組合との団体交渉において誠実に対応しなかったこと、<2>「職場を守る会」主催名義の新年会、忘年会等の諸行事に組合員の参加が妨げられているのに、経費の援助を行ったことが不当労働行為にあたるとして救済申立てのあった事件。初審東京地労委は、団交応諾と経費援助の禁止を命じ、中労委もこれを維持した。会社は、これを不服として取消訴訟を提起し、東京地裁は、救済の利益が消滅していると認められる点について、命令を取り消し、その余の点については、会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 被申立人は、申立人組合員X1に対し、平成7年12月30日から同8年3月31日までの間フルタイムインストラクターとして雇用していたものとして取り扱い、同人が勤務に就いていれば得られたであろう賃金相当額及びこれに年率5分を乗じた金額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人から平成7年12月5日付け団体交渉申入書で申入れのあった事項(日本人スタッフの年末一時金に関する事項を除く)に係る団体交渉に、開催場所にこだわることなく、誠意をもって速やかに応じなければならない。 
判決の要旨  2249 その他使用者の態度
憲法28条は労働者の団体交渉をする権利を保障し、これを受けて労組法7条2号は使用者の正当な理由のない団体交渉拒否を不当労働行為として禁止している。団体交渉は、労働者の団体がその団結力を背景として、その構成員の労働条件について、労使対等の立場に立って自主的に交渉することをその本質とするものであり、右憲法及び労組法の現定による団体交渉権の保障も、このような団体交渉を保障することを目的としたものと解されるとされた例

2249 その他使用者の態度
使用者が団体交渉の要求を全面的に拒否し、あるいは団体交渉の申入れを事実上無視したりするような場合はもちろん、団体交渉自体は行われたものの、使用者が労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもって団体交渉に当たったとは認められないような場合も、労組法の規定により不当労働行為とされる団体交渉拒否に当たるものと解されるとされた例

2249 その他使用者の態度
使用者が労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもって団体交渉に当たったかどうかについては、団体交渉の申入れの段階における対応、団体交渉の場において労使の対立点を可能な限り解消させる努力を行っていたか、そのための方法として、客観的具体的根拠を示して説明するなど相手方の納得を得るよう努力したか、最終的には双方が合意に達したとしても、団体交渉の過程における使用者の対応が労働者の団体交渉権を尊重した誠実なものであったかなどの観点から検討して判断されるべきものと解されるとされた例

2249 その他使用者の態度
団体交渉の日時・議題等が労使間で合意された以上、そのプロセスは問題とはならないとの会社の主張が理由がないとされた例

2249 その他使用者の態度
組合からの団体交渉の申入れに対して大半は合意のうえ協定を調印しているので、団体交渉を尽くしたことになるとの会社の主張が理由がないとされた例

2249 その他使用者の態度
<1>組合の団交申入れに対し、文書で拒否回答したのみでこれに応じず、<2>団交でも何らの根拠も示さず拒否回答をなし、<3>会社回答を議題とする団交を申入れ、これにより開催された団交で組合の要求事項につき具体的協議を行わず、<4>会社回答による妥結・調印でなければ団交に応じないとし、<5>その後わずかに行われた団交でも、具体的根拠等を示さず拒否回答のみで、対立点を可能な限り解消させようとしないなどの会社の一連の対応は、組合の団体交渉権を尊重して誠意をもって団交に当たったものとは到底認められず団交拒否にあたるとされた例

2249 その他使用者の態度
使用者が団体交渉を行うことを労組法によって義務づけられている事項(義務的団体交渉事項)とは、団体交渉を申入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものをいうと解されるとされた例

2249 その他使用者の態度
2302 労務管理・労使関係
2304 経営事項
「仕事の命令系統、従業員の仕事の範囲及び責任範囲を明確にすること」との要求は文言だけからすると使用者の専権に属する業務命令権や人事権に関する事項のようにも見えるが、要求の趣旨は、それらの権限の行使の結果もたらされる組合員の労働条件に関する事柄について改善を求めるものと認められ、その限りで義務的団体交渉事項に含まれるというべきであるとされた例

2249 その他使用者の態度
2250 未妥結・打切り・決裂
会社は団体交渉で結論を述べるだけで、具体的な内容に関する説明さえしておらず、双方間で実質的な協議を行った末、これ以上交渉の進展の余地がなくなったと認めるに足りる証拠もないとして、会社の、団交の結果主張の隔たりが大きく互譲の余地のないことが明らかであったから、既に団交義務は消滅していた旨の主張が理由がないとされた例

2247 解決済
2249 その他使用者の態度
会社は、就業時間内の組合活動の保障等の要求事項については、棚上げ協定の成立により議題とはなし得なくなっていたと主張するが、同協定は組合の要求事項について一時的に団交の議題としないことを合意したものと認められ、それ以上に今後一切団交議題としないことを合意したものとまでは認められないうえ、組合の団交申入れの時点においては、同協定成立後既に3年を経過していることを考慮すれば、会社の主張は理由がないとされた例

2249 その他使用者の態度
団体交渉は、労使双方が協議することにより意見の対立点を解消することを目的とするものであるから、直接相まみえて話し合う方式によるのが原則であるというべきであり、特段の事情がない限り、書面の交換によって団体交渉に代えることはできず、本件について特段の事情を認めるに足りる証拠はないとして、会社の、文書による意見交換を十分に行っていたから、組合は会社の見解を熟知しており、一切話合いが行われなかったという実態にはない旨の主張を採用することはできないとされた例

2249 その他使用者の態度
実質的な論議が行われていないにもかかわらず、主張は平行線でありこれ以上の団交は無意味であるとして団交申入れに応じず、逆に会社回答による妥結・調印のみを議題とする団交を会社から申入れ、議題に組合が異を唱えると直ちに団交を拒否し、結果的に会社回答による妥結・調印を余儀なくするという手法を繰り返していた会社の対応は、根拠や資料等を示すことなく一方的に会社回答を押しつけるものと非難されても仕方のないものであり、対立点を解消するための努力を行っておらず、到底誠実な対応とは認められないから団体交渉拒否に当たるとされた例

2249 その他使用者の態度
会社は、組合の団交申入れに近い時期を提案して団交を申入れており、会社の申入れにかかる団交日時・議題の設定、文書応諾を求めている点は何ら非難されるべきでない旨主張するが、これらの会社の対応は一回限りというものではなく、会社回答を議題とする団交を一度形式的に行った後は組合の団交申入れには応じず、会社回答による妥結・調印のみを議題とする団交を会社から申入れるという手法を一貫して続けており、この一連の経過に照らすと、会社が団体交渉において実質的な協議を行おうとする意思は全く見られないから会社の主張は理由がないとされた例

2249 その他使用者の態度
賃金の額いかんが労働者にとって最も重要な労働条件の一つであることを考慮すれば、使用者は労働組合が回答の具体的根拠を明らかにするよう要求した場合には、必要に応じて資料を提示するなどの方法で根拠を具体的に開示して見解の対立を可能な限り解消させるように努力すべき義務があるというべきところ、「昨年並み」との提示は会社の目標ないし結論を示すのみであって到底回答の根拠を示すものとはいえず、これを繰り返したところで、努力義務を尽くしたとはいえないとされた例

6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
命令は、団交において提示すべき資料の選択について組合の要求の程度に応じて会社が裁量により決すれば足りるとしており、(初審)命令の主文もその意味で理解されるべきものであるから、会社の主張する、どのような資料を提示すべきか説明していないとの瑕疵は、何ら存在しないとされた例

1601 福利厚生上の差別
会社は、組合員が守る会によって、組合員であることを理由に、会社の福利厚生の一環としての実質を有する諸行事への参加を拒否され、そのため従業員であれば本来等しく享受できるはずの利益が受けられなくなることを容認しながら守る会に対する経費援助を続けてきたもので、このような会社の取扱いは、組合員であることを理由としてする不利益取扱いに当たるとされた例

2501 親睦団体の利用
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社は、組合員が守る会によって、組合員であることを理由に、会社の福利厚生の一環としての実質を有する諸行事への参加を拒否され、そのため従業員であれば本来等しく享受できるはずの利益が受けられなくなることを容認しながら守る会に対する経費援助を続けてきたもので、このような会社の取扱いは、組合員を不利益に取り扱うことによって組合員の組合活動を抑圧ないし制約し、もって組合の自主的運営・活動を妨害しようとする行為ということができ、支配介入(労組法7条3号)に当たるとされた例

6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
本件命令は、守る会が組合員を諸行事に参加させない場合に限って守る会に対する経費援助を禁止しているにとどまり、会社の福利厚生の廃止を命じるものではないから、会社の、命令は従業員の福利厚生の廃止を命じたことになり労委の裁量権を逸脱した違法があるとの主張は理由がないとされた例

6310 違法判断の基準時
団体交渉における要求事項のうち本件命令発出時において既に実現していたこと等について、本件命令発出の時点において団交を行うことを命じる必要性は消滅していたとして当該部分に関する命令が取り消された例

2300 賃金・労働時間
組合からの夏休みの付与要求について、会社は夏時間について二カ月間就業時間の30分短縮を行っていると主張するが、これをもって団交を命じる必要性が消滅したとはいえないとされた例

2300 賃金・労働時間
組合からの夏休み付与要求について、会社は、本件命令交付前に組合の要求事項から日数が削除されたので団交の必要性が消滅したと主張するが、この事実のみでは組合が7日間の夏休みの要求を撤回したとまでは認められず、団交を行うことを命じる必要性が消滅したとはいえないとされた例

4505 その他
会社は年休取得の要件として、全労働日に一般休暇日である土曜日を含めているが、労働義務の免除された土曜日を労働日に含めている就業規則の当該規定部分はそもそも労基法に反して無効であるから、この点において既に一般休暇日である土曜日を休日とすることにつき団交を命じる必要性もないとされた例

2249 その他使用者の態度
会社が提示している資料はいずれも一般的な給与水準等を示す資料にすぎず、これら資料によって会社回答の根拠が具体的に明らかになるものではなく、本件命令発出時において、会社が団交の席上具体的事由を開示して対立点を可能な限り解消しようとする努力をするようになったと認めるに足りる証拠もないから、会社が資料を提示しているので救済利益が消滅したとの会社の主張は理由がないとされた例

6310 違法判断の基準時
本件命令発出の時点までに諸行事の主催者が守る会から会社に変更になり、その諸行事への組合員の参加が妨げられないようになっており、命令発出の時点で、組合員の諸行事への参加が妨げられていることを前提とした守る会への経費援助を禁止する必要性は消滅していたとして、当該部分に関する命令が取り消された例

5005 損害賠償の請求
会社の諸行事から組合員を排除したことに対する謝罪や排除によって組合員が被った損害の賠償については、救済命令とは関係なく別途解決すべき事柄であるとされた例

5001 将来における予防、不特定な内容の請求
現に不当労働行為が行われていない以上、特段の事由のない限り、将来不当労働行為が行われる可能性があるということのみでこれを禁止すべき必要性はないものと認められるとされた例

業種・規模  専門サービス業(法律事務所、経営コンサルタント業等) 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集32集421頁 
評釈等情報  労働判例 1997年12月15日 725号 15頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委平成 1年(不)第3号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 3年12月17日 決定 
中労委平成 4年(不再)第3号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成 6年11月30日 決定 
 
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