労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  ネスレ日本(第二島田工場) 
事件番号  東京高裁平成12年(行コ)第118号 
控訴人  ネスレジャパンホールディング株式会社 
控訴人  中央労働委員会 
控訴人参加人  ネッスル日本労働組合島田支部 
被控訴人  ネスレジャパンホールディング株式会社 
被控訴人  ネッスル日本労働組合島田支部 
被控訴人  中央労働委員会 
判決年月日  平成13年 4月 9日 
判決区分  控訴の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、組合員に対し、永年勤続表彰を行わなかったこと、社内融資の利子補給を拒否したこと、組合宛の郵便物を第三者に引き渡したことが、それぞれ不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 初審静岡地労委は、永年勤続表彰を行うこと、社内融資の利子補給を社内規定に基づき行うこと、郵便物を第三者に引き渡す等の組合活動に対する妨害の禁止及び文書掲示を命じたところ、これを不服として会社から再審査の申立てがなされ、中労委は、初審命令の一部を変更し、その余の再審査申立てを棄却した。
 会社はこれを不服として、東京高裁に控訴を提起していたが、同高裁は各控訴をいずれも棄却する判決を言い渡した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用中、控訴人補助参加人に生じた費用は同補助参加人の負担とし、その余は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  5200 除斥期間
昭和58年4月から同年11月までに勤続10年の永年勤続表彰の被表彰者年限に達した組合員X1外10名については遅くとも昭和59年1月末日までに会社が表彰せず、表彰する旨の通知をせず、被表彰者として「ネッスルエージ」に掲載しなかったことにより、この点にに関する会社の一体となる行為はすべて終了していたから、本件救済申立てがされた昭和60年2月23日の時点では、右の会社の行為が終了した日から1年が経過した後であることは明らかであり、X1外10名について永年勤続表彰を行わないという決定及びこれと一体となる会社の行為を対象とする救済申立ては、労組法二七条二項の定める期間の経過後にされたものとして不適法であると判断された例。

1602 精神・生活上の不利益
従業員の勤続年数が10年に到達したにもかかわらず、永年勤続表彰が行われないとすると、その従業員は勤続10年記念バッジと祝い状がもらえないということになるにすぎないが、長年会社に勤務し会社に貢献した従業員を表彰するという制度の趣旨に照らせば、永年勤続表彰が行われない従業員には精神的待遇等について差別的な待遇がされたものというべきであるところ、労組法七条一号にいう「不利益取扱い」とは、例えば、減俸、昇給停止等の経済的待遇に関して不利な差別待遇を与えるのみではなく、広く精神的待遇等に関して不利な差別的取扱いをすることも含むものと解すべきであるから、従業員が被表彰年限に達したにもかかわらず永年勤続表彰が行われないことは、労組法七条一号にいう不利益取扱いに当たると解すのが相当であるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
3700 使用者の認識・嫌悪
本来永年勤続表彰制度の内容、種類及び要件等の決定については会社の裁量の範疇に属することもあって、会社が組合差別的な意図を決定的動機として永年勤続表彰制度を改正したとは未だ認めることはできないが、組合員で永年勤続表彰制度を改正した昭和58年4月以降に勤続年数が被表彰年限に到達した者で永年勤続表彰を受けた者は皆無である反面、島田工場に勤務する会社の従業員のうち、組合員以外の従業員で勤続年数が被表彰年限に到達した者は全員表彰されていることをみると、会社が合理的な理由がない限り、改正後の永年勤続表彰制度の運用に当たり、組合を嫌悪し、不当労働行為意思に基づいてその所属の組合員を殊更に不利益に取り扱っている(同時に組合の弱体化を企図している)といわざるを得ないとされた例。

6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
組合員X2については、10年間にわたり欠勤や遅刻・早退の頻度が多く、その勤怠状況が相当劣悪であったし、また、勤務態度等にも問題があったから、本件表彰内規所定の「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」には該当しないと判断せざるを得ず、前記「合理的な理由が存することになるから、同人が永年勤続表彰制度の対象から除外されたことをもって、殊更不利益な取扱いを受けたということはできないとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
組合員X3に関しては工場長室等に侵入した上、その業務を妨害した行為、X1及びX4については自家用車にステッカーを貼付しなかったという規律違反行為があったところ、これらの行為は本件表彰内規所定右要件該当の有無の判断に当たり、一定程度不利益に斟酌せざるをえないが、右要件該当の有無は、従業員の過去10年間の長期にわたる勤務態度や勤怠状況等を総合的に考慮して決定すべきという永年勤続表彰制度の趣旨を勘案すると、右業務妨害の回数、程度や規律違反の内容、程度等からみて、右X4ら3名の所為のみでは右要件に該当しない理由としては根拠薄弱といわざるを得ず、X5及びX6については、右要件該当の有無の判断に際し、不利益に斟酌すべき事実はないから、組合員X1ら5名に関しては「合理的な理由」が存しないこととなり、組合員の直属の上司及び工場長が組合員X1ら五名について勤続10年の永年勤続表彰の推薦をしなかったのは、不当労働行為意思を有する会社の意を受けて又は意を汲んでの行為であり、組合又は組合員に対する不当労働行為意思に基づく不利益な取扱いというべきであるとされた例。

2802 福利厚生資金に関する寄付・貸付等
本来利子補給制度の内容及び受給要件等の決定については会社の裁量の範疇に属することもあって、会社が組合差別的な意図を決定的動機として利子補給制度を新設したとは未だ認めることはできないが、利子補給制度の新設以降島田工場においては約40名の従業員が利子補給の申請をし、組合員X3外2名を除くその余の者は利子補給を受けた反面、X3外2名は利子補給を受けていないこと、X3外二名以外に組合員で利子補給の申請をした者はいないという実情にあることからみると、会社は、合理的な理由がない限り、新たに導入した利子補給制度の運用に当たり、組合を嫌悪し、不当労働行為意思に基づいてその所属の組合員を殊更に不利益に取り扱っている(同時に組合の弱体化を企図している)ものといわざるをえないとされた例。

2802 福利厚生資金に関する寄付・貸付等
利子補給の受給資格の有無の判断に当たり、会社において斟酌し得る事実としては、X3に関しては昭和57年8月ころに不注意により冷却水をあふれさせたという一回限りのミスにすぎないし、また、X4については昭和58年以降自家用車にステッカーを貼付しなかったという規律違反であるが、その内容、程度等からみて企業秩序の維持に支障をきたすほどの重大のこととは評価できないから、X3及びX4につき、「業務上の指示・命令に従わず、会社の秩序を乱した者」や「職務に怠慢であり、勤務成績不良の者」等、受給資格に定められた除外事由に該当すると判断する根拠は薄弱であるといわざるを得ず、X1に関しては、右受給資格の有無の判断に際し、斟酌し得る事実は存せず、X3外2名については、前記「合理的な理由」が存しないことから、X3外2名については、いずれも利子補給の受給資格を有するにも関わらず、組合員の上司及び工場長は、不当労働行為意思を有する会社の意を受けて又は意を汲んで、昭和59年11月に利子補給の申請のあった組合員X3外2名について利子補給の推薦をせず、その支給をしなかったものと推認せざるを得ないとされた例。

2802 福利厚生資金に関する寄付・貸付等
組合員X3外2名は会社の従業員として「会社の方針に協力し、社業に貢献する積極的な意思を有すると認められる者」に当たり、「業務上の指示・命令に従わず、会社の秩序を乱した者」又は、「職務に怠慢であり、勤務成績不良の者」に当たらないにもかかわらず、所属長を含む管理職2名が不当労働行為意思をもって右3名について利子補給の推薦をしなかったために利子補給の支給をされなかったというべきであるが、右3名が利子補給の支給を受けられないことは、単に右3名の個人的な雇用関係上の権利利益を侵害するにとどまらず、右3名に生ずる被害を通じ、組合員の組合活動を萎縮させてその組合活動一般の抑圧ないし制約し、かつ、組合の運営について支配介入するという効果を必然的に伴うものであるから、労働組合法第七条第一号及び第三号の不当労働行為に当たるとされた例。

4102 承認・合意
組合員X4が昭和62年4月7日に会社を退社しており、中労委命令の発令時には会社に在籍していないが、本件全証拠に照らしても、X4が、積極的に、利子補給制度に基づいて支給される金員を放棄する旨の意思表示をなし、又は労働組合の救済命令申立てを通じて利子補給制度に基づいて支給される金員の回復を図る意思のないことを表明したことを認めるに足りる証拠はないから、組合はX4についても利子補給制度に基づいて支給される金員の支払を求めることができるものというべきであり、X5について被救済利益を欠いているという会社の主張は採用できない(X4の10年の永年勤続表彰についても同様)とされた例。

業種・規模  飲料・たばこ・飼料製造業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集36集135頁 
評釈等情報   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
静岡地労委昭和60年(不)第1号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和63年 9月22日 決定 
中労委昭和63年(不再)第51号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成 8年 9月 4日 決定 
東京地裁平成 8年(行ウ)第232号 救済命令の一部取消し  平成12年 2月23日 判決