労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  朝日火災海上保険 
事件番号  東京地裁平成10年(行ウ)第44号 
原告  X1 
原告  朝日火災海上保険株式会社 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  X1 
被告参加人  朝日火災海上保険株式会社 
判決年月日  平成13年 8月30日 
判決区分  救済命令の一部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、全損保朝日火災支部の組合員19名に関して、支部の定例大会に向けて行う出席代議員の選出等の組合活動に介入したこと、組合4名の時間内組合活動休暇を承認せず、また、組合員1名の時間内組合活動休暇を承認せず、賃金カットしたこと、組合員17名を配置転換したこと、昭和56年以降平成3年までの賃金、賞与、職能資格格付け及び職位について、差別的取扱いをしたことが、不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 初審東京地労委は、出席代議員の選出等の組合活動に関する支配介入の禁止、時間内組合活動休暇の不承認による支配介入の禁止、組合員1名の賃金カット分の支払、組合員6名の原職又は原職相当職への復帰、昭和58年10月以降平成3年度までの賃金、賞与に係る人事考課の再査定および差額支払、平成3年6月以降の職能資格格付けの是正、以上に関する文書掲示及び履行報告を命じ、その余の申立てについては却下ないし棄却し、労使双方の再審査申立てに対し、中労委は、初審東京地労委の一部救済命令を変更したほかは、各再審査申立てを棄却した。会社及び組合員19名は、これを不服として、東京地裁にそれぞれ取消訴訟を提起したところ、同地裁は、職能資格格付け及び職位の是正の申立てのうち一部を棄却した部分等の命令を一部取り消したが、本件が、不当労働行為に該当するとする中労委命令を支持する内容の判決を言い渡した。 
判決主文  1 被告が都労委平成11年不第104号についてした平成12年6月6日付け命令の取消しを求める原告の請求を棄却する。
2 原告のその余の請求に係る訴えをいずれも却下する。
3 訴訟費用は、参加によって生じたものを含め、原告の負担とする。 
判決の要旨  2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
支部定期大会に向けた名古屋、東京等の各分会総会での代議員選出にあたり、会社の名古屋支店等や各営業所における課所長等による言動は、上部団体の運動方針を支持するグループの組合活動を疎外するものであり、会社の意を体して行われたものと推認できること、さらに、課所長等の言動の内容、時期等を総合すれば、これらの言動が使用者側に許された言論の範囲を超えるものであるから、組合内の特定のグループの活動を抑圧するために行った支配介入であり、不当労働行為に当たるとされた例。

1600 休暇の取扱い
会社における時間内組合活動休暇の従前の付与状況、会社がA派に属する組合員ら5名に対して時間内組合活動休暇を付与しないことに至った経過、同人らに時間内組合活動を付与せず、かつ賃金カットを行ったこと等によって被る不利益、会社による支配介入行為等の時期と、時間内組合活動休暇付与問題の生じた時期とが近接していること等に鑑み、会社が、組合員ら5名について時間内組合活動休暇の付与を認めなかったこと等は、A派に属する組合員ら5名の活動を抑圧することを企図して行なったものと認めることができ、このことは組合員ら5名に対する不利益取扱いであるとともに、組合に対する支配介入として、不当労働行為に当たるとされた例。

5200 除斥期間
5201 継続する行為
配転命令自体が一個の独立した行為であり、そこに労組法二七条二項の「継続する行為」なるものを措定することはできないから、各配転に係る救済申立は、その配転の時期に照らし、いずれも同法二七条二項所定の1年の申立期間を徒過してされたものであって不適法であり、組合の配転に係る救済申立てを却下した本件命令は正当であるとされた例。

1202 考課査定による差別
会社の人事給与制度を外形的にみれば、職能資格制度として一定程度整備されたものであるといえるが、制度の具体的運用において最終評定決定者の主観ないし恣意の入り込む余地が相当程度あることから、会社の職能資格制度は、制度の具体的運用において評定者の恣意的運用を阻む程度にまで確立されたものといえないと判断でき、最終評定決定者の常務会が行なった組合員ら17名に係る人事考課は第一次評定及び第二次評定そのものの正確性に疑問が残る上、少なくともその調整をした上でされた最終評定決定は、組合活動を嫌悪し、その活動を弱体化させることを企図してされた恣意的な判断の下に同人らを殊更に低く評価したものと言わざるを得ず、この低評価に基づき組合員らの賃金、賞与、職能資格格付け及び職位が他の社員に比べ低位に置かれているのであるから、組合員らに対する不利益取扱いであり、かつ、組合の運営に対する支配介入に当たると推認することができるとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
使用者が、救済対象者と同年同期入社者の業績等を疎明して救済対象者の業績等が相当劣っていることを示す等、評定内容に関する具体的事情を疎明し、社内における処遇のバランス等に留意することが相当であると判明したのに、労働委員会がこれを参酌せずに是正措置を決定すれば、裁量権行使の範囲を逸脱したものとして違法となることがあり得るが、使用者が具体的事情を疎明せず、労働委員会には使用者に指摘するような実体があるか否かが分からない場合には、労働委員会は、判明しているそれ以外の事情を検討して救済措置の内容を決定することができると解するのが相当であり、本件命令が、賃金及び賞与について、人事考課査定の中間評価であるCとして再査定して昇格させ、既支給額との差額を支払うことを命じている部分は、裁量権の範囲内であると解するのが相当であるとされた例。

6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
労働委員会は、昇格に関して不当労働行為を行なった使用者が、救済対象者となる同年同期入社の業績、能力等を開示せず、そのため是正に必要な資料が得られない場合、救済措置の内容につき、例えば最も遅く昇格した者の待遇を基準にしなければならないというような制約を受けるものではないというべきであり、会社では、昇格は職能資格ごとに決定されるから、昇格格差の是正のために、職能資格格付けについて、本件命令のような取扱いをすることも、その裁量権の範囲内として許されるもので、これが使用者の人事権を著しく不当に制約するものではないと解するのが相当であるとされた例。

6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
本件命令が、X2を除く組合員らに対し、平成3年6月1日における職位について、同年同期入社者に遅れないように取り扱うことを命じた点は、会社では職能資格と職位が応当しており、一定の職能資格に格付けられるとそれに対応するいずれかの職位に就くことになること等からすれば、救済方法が、会社の人事権を著しく不当に制限し、労働委員会に委ねられた裁量権の範囲を逸脱ないし濫用したものとまでいえないとされた例。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集36集636頁 
評釈等情報   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委昭和58年(不)第103号
東京地労委昭和59年(不)第18号
東京地労委平成 3年(不)第72号
東京地労委昭和59年(不)第70号
東京地労委平成 1年(不)第76号
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 8年 1月23日 決定 
中労委平成 8年(不再)第6号
中労委平成 8年(不再)第7号
一部変更(初審命令を一部取消し)  平成10年 1月21日 決定 
東京高裁平成13年(行コ)第209号 救済命令の一部取消し  平成15年 9月30日 判決 
東京高裁平成15年(行ノ)第203号 その他  平成15年12月22日 判決 
最高裁平成16年(行ツ)第31号 上告の棄却  平成16年 6月29日 判決 
最高裁平成16年(行ヒ)第34号 上告不受理決定  平成16年 6月29日 判決 
最高裁平成16年(行ヒ)第35号 上告不受理決定  平成16年 6月29日 決定 
 
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