労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  ネスレ日本(第二島田工場) 
事件番号  東京地裁平成 8年(行ウ)第232号 
原告  ネスレ日本 株式会社 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  ネッスル日本労働組合島田支部 
判決年月日  平成12年 2月23日 
判決区分  救済命令の一部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、ネッスル日本労働組合(以下「組合」)と、組合と同名の訴外別組合とが併存していた会社において、会社が、(1)組合員17名に対し永年勤続表彰を行わなかった、(2)社内融資の利子補給を拒否した、(3)組合宛の郵便物を別組合に引き渡した、(4)右(1)?(3)についての組合の団体交申入れに応じなかった、として救済申立てのあった事件である。初審静岡地労委(昭60(不)1、昭63・9・22命令)は、(1)?(4)が不当労働行為であることを認めた上で、(4)については、既に別事件で団交拒否の禁止を命じているとして申立を棄却し、(1)?(3)について救済命令を発した。会社の再審査申立に対し中労委(昭和63(不再)51・平8・9・4命令)は、(3)については会社は仮処分決定により初審命令の内容を履行しているので、あらためて救済を命ずるまでもないとして、当該部分を取消した(再審査命令主文第I項)ほかはこれを棄却した。会社はこれを不服として行政訴訟を提起したが、東京地裁は、(1)について、除斥期間経過(11名)と不利益取扱いに当たらないこと(1名)を理由に中労委命令の一部を取り消した。 
判決主文  本件控訴を棄却する。
控訴費用(参加費を含む。)は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  5200 除斥期間
5201 継続する行為
会社が永年勤続表彰に関して差別取扱いの意図に基づいて行う一連の行為、すなわち、対象からの除外の決定、勤続年限到達時から相当な期間が経過したのに表彰対象の通知を行わず、記念品を贈呈しないこと、同時期に年限が到達した他の従業員を社内報に掲載したのに当該従業員を掲載しないことは、一体として1個の不当労働行為をなすものと見るべきであり、右各行為に係る最後の時点から1年以内に永年勤続表彰上の差別的取扱いの是正を求める救済の申立てがなされたときは、右救済申立は労組法二七条二項の定める期間内にされたものとして適法であるが、1年を経過した後に右救済の申立てがされたときは不適法であるとされた例。

5200 除斥期間
5201 継続する行為
なお、被告は、永年勤続表彰やその可否の検討はいつでもできるはずであることを理由に、勤続年数に到達した従業員について永年勤続表彰を組合の再三の要求にもかかわらず拒否し続けていることが不当労働行為であると主張しているが、理由がない。被告引用のゴンチャロフ事件判決は、救済申立人が容器洗浄という同一の作業に継続して専ら従事させられ、日々現実に不利益を被ることにかんがみ容器洗浄の作業は容器洗浄の指示に吸収、包含されない別個の継続する行為の実質を有するものとして独立した不当労働行為となり得ると解する立場に立っており、東洋シート事件判決も同様に解する立場に立っているものであって、本件はこれら判決とは事案を異にしているとされた例。

5200 除斥期間
5201 継続する行為
昭和58年4月から同年11月までに勤続10年の永年勤続表彰の被表彰年限に達した組合員X1外10名については同年12月末日までに会社が表彰せず、表彰する旨の通知をせず、被表彰者として「ネッスルエージ」に掲載しなかったことにより、この点に関する会社の一体となる行為はすべて終了していたから、本件救済申立てがされた昭和60年2月23日の時点では、右の会社の行為が終了した日から1年を経過した後であることは明らかであり、X1外10名について永年勤続表彰を行わないという決定及びこれと一体となる会社の行為を対象とする救済申立ては、労組法第二七条二項の定める期間の経過後にされたものとして不適法であると判断された例。

1602 精神・生活上の不利益
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
X2については、10年間にわたって欠勤、遅刻・早退が多く、その勤怠状況が相当劣悪であったし、勤務態度にも問題があったから、永年の勤務が誠実であったとは認め難く、他の従業員の模範となるということも困難であり、会社がX2を永年勤続表彰の対象から除外した決定的動機は別の点にあったが、X2は自らの行為の結果として元々「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」に当たらないというほかなく、永年勤続表彰の対象から除外されたことをもって不利益な取扱いを受けたものということはできないとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
従業員の勤続年数が10年に到達したにもかかわらず、永年勤続表彰が行われないとすると、その従業員は勤続10年記念バッジと祝い状がもらえないということになるにすぎないが、長年会社に勤務し会社に貢献した従業員を表彰するという永年勤続表彰という制度の趣旨に照らせば、永年勤続表彰が行われない従業員には精神的待遇等について差別的な待遇がされたものというべきであるところ、労組法七条一号にいう「不利益取扱い」とは、例えば、減俸、昇給停止等の経済的待遇に関して不利な差別待遇を与えるのみではなく、広く精神的待遇等に関して不利な差別的取扱いをすることも含むものと解すべきであるから、従業員が被表彰年限に達したにもかかわらず永年勤続表彰が行われないことは、労組法七条一号にいう不利益取扱いに当たると解するのが相当であるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
本件永年勤続表彰制度は、新たに表彰内規を制定して勤続年数が10年、20年又は25年に達した従業員のうち「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」で所属長を含む管理職2名の推薦があった者に対し永年勤続表彰を行うことに改められたが、この制度が10年、20年又は25年という従業員の勤続年数に着目し、これを基本として表彰を行う永年勤続表彰制度であるという本質及び運用の実態を考えると、勤続年数10年の永年勤続表彰についていうならば、「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」に当たるか否かを判断するにあたりどのような事情を考慮するかについて会社に広範な裁量があるということはできず、該当する10年間に病気の療養のため長期間休職し、又は重い懲戒処分を受け、若しくは繰り返し懲戒処分を受けた等の特段の事情があれば格別、そのような事情がないにもかかわらず、「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」に当たらないというためには、長期間にわたり勤怠状況、勤務態度が劣悪である等、職場の誰が見ても表彰されない理由がうかがい知れるほど客観的、具体的に明確な根拠が存してしかるべきであるとされた例。

5121 挙証・採証
6221 不利益取扱い
組合の組合員である従業員が勤務年数が10年に達したにもかかわらず、格別不都合な事情も存しないのに永年勤続表彰の対象から除外されれば会社の組合に対する嫌悪と相まって不当労働行為意思に基づく不利益取扱いであることが推認されることとなるから、会社は、その従業員について特段の事情が存すること又は長期間にわたり勤怠状況、勤務状態度が劣悪であることを裏付ける具体的事実が存することを立証する実際上の必要が生ずるものというべきであるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
10年の永年勤続表彰が10年間という長い勤続年数に着目し、これを基本として表彰を行うことを本旨としていることからすれば、会社が従業員の10年間の勤続年数全般又はその相当部分にわたる勤怠状況、勤務状況にかかわる事由ではなく、直近の昭和58年以降の組合が行った街頭宣伝活動を主たる理由として「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」に該当することを否定することは、会社が組合及び会社の組合弱体化に対抗して行うその活動を嫌悪していること以外にその真の理由を見出すことは困難であり、更にK外5名が右に述べたような行為をしたことは認めることができないのであって、X2外5名が街頭宣伝活動をしたことを永年の勤務が誠実であるかどうか、他の従業員の模範となるかどうかという評価をするに当たって不利益にしんしゃくすることはできないというべきであるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
X1及びX3は、会社が、駐車場の管理の必要から従業員が自家用車を乗り入れる場合には、ステッカーを貼付することを決め、その旨を従業員に周知したにもかかわらず、これに従わなかったのであるから、一定程度不利益にしんしゃくされてもやむを得ないが、本件表彰内規に定める「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」の意義に照らせば、これらの事実だけでは、X1及びX3が本件表彰内規に定める「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」に当たらない理由としては足りないというべきであり、これらの事実のほかは、X1及びX3が本件表彰内規に定める「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」に当たらない理由として会社が主張する事実のいずれも認められないのであるから、X1及びX3について「永年誠実に勤務し、他の模範となる従業員」に当たるものと認められるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
会社がA組合派からの支部定期大会における支部役員の選任結果の通知の受取りを拒否して以来一貫して組合の存在を否認する態度をとり続けてきたのであり、工場においては工場長をはじめとする管理職等が会社の意を受けて又は意を汲んで組合の存在を否認するという態度をとり続けていたのであって、そうであるとすれば、工場において組合員の直属の上司及び工場長は不当労働行為意思を有する会社の意を受け又は意を汲んで組合又は組合員に対する不当労働行為意思に基づいて勤続年数が10年に到達した組合の組合員について勤続10年の永年勤続表彰の推薦をしなかったものと推認されるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
2620 反組合的言動
組合員5名が勤続10年の永年勤続表彰を受けられないことは、単に右5名の個人的な雇用関係上の権利利益を侵害するにとどまらず、5名に生ずる被害を通じ、組合の組合員の組合活動意思を萎縮させその組合活動一般を抑圧ないし制約し、かつ、組合の運営について支配介入するという効果を必然的に伴うものであるから、労組法七条一号及び三号の不当労働行為に当たるというべきとされた例。

6221 不利益取扱い
組合員X3が昭和62年4月7日に会社を退社しており、中労委命令の発令時には会社に在籍していないが、本件全証拠に照らしても、X3が、積極的に、利子補給制度に基づいて支給さる金員を放棄する旨の意思表示をなし、又は労働組合の救済申立てを通じて利子補給制度に基づいて支給される金員の回復を図る意思のないことを表明したことを認めるに足りる証拠はないから、組合はX3についても利子補給制度に基づいて支給される金員の支払いを求めることができるものというべきであり、X3について被救済利益を欠いているという会社の主張は採用できないとされた例。

1601 福利厚生上の差別
6223 支配介入
組合員3名は会社の従業員として「会社の方針に協力し、社業に貢献する積極的な意思を有すると認められる者」に当たり、「業務上の指示・命令に従わず、会社の秩序を乱した者」又は「職務に怠慢であり、勤務成績不良の者」に当たらないにもかかわらず、所属長を含む管理職2名が不当労働行為意思をもって右3名について利子補給の推薦をしなかったために利子補給をされなかったというべきであるが、右3名が利子補給の支給を受けられないことは、単に右3名の個人的な雇用関係上の権利利益を侵害するにとどまらず、右3名に生ずる被害を通じ、組合員の組合活動意思を萎縮させてその組合活動一般を抑圧ないし制約し、かつ、組合の運営について支配介入するという効果を必然的に伴うものであるから、労組法七条一号及び三号の不当労働行為に当たるとされた例。

1601 福利厚生上の差別
利子補給を受けられないことは、福利厚生給付を支給されないという経済的不利益を受けることにほかならず、これが労組法七条一号にいう不利益取扱いに当たることは明らかであるとされた例。

業種・規模  食料品製造業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集35集678頁 
評釈等情報  中央労働時報 2000年11月10日 974号 42項 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
静岡地労委昭和60年(不)第1号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和63年 9月22日 決定 
中労委昭和63年(不再)第51号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成 8年 9月 4日 決定 
東京高裁平成12年(行コ)第118号 控訴の棄却  平成13年 4月 9日 判決