労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  朝日火災海上保険 
事件番号  東京高裁平成13年(行コ)第209号 
控訴人  朝日火災海上保険株式会社 
被控訴人  中央労働委員会 
被控訴人参加人  X1外18名 
被控訴人参加人  朝日火災海上保険株式会社 
判決年月日  平成15年 9月30日 
判決区分  救済命令の一部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、全損保朝日火災の組合員19名に関して、支部の定例大会に向けて行う出席代議員の選出等の組合活動に支配介入したこと、組合員4名の時間内組合活動休暇を承認せず、賃金カットしたこと、組合員17名を配置転換したこと、昭和56年以降平成3年までの賃金、賞与、職能資格格付け及び職位について、差別的取扱いをしたことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 初審東京地労委は、出席代議員の選出等の組合活動に関する支配介入の禁止、時間内組合活動休暇の不承認による支配介入の禁止、組合員1名の賃金カット分の支払、組合員6名の原職又は原職相当職への復帰、昭和58年10月以降平成3年度までの賃金、賞与に係る人事考課の再査定及び差額支払、平成3年6月以降の職能資格格付けの是正、以上に関する文書掲示及び履行報告を命じ、その余の申立てについては却下ないし棄却し、労使双方の再審査申立てに対し、中労委は初審東京地労委の一部救済命令を変更したほかは、各再審査申立てを棄却した。会社及び組合員19名は、これを不服として東京地裁にそれぞれ行政訴訟を提起したところ、同地裁は、職能格付け職位の是正の申立てのうち一部棄却部分等の命令を一部取り消したが、本件が不当労働行為に該当するとする中労委命令を支持する判決を言い渡した。双方は、これを不服として控訴を提起していたが、東京高裁は、これに対し、配転の取消しを求める訴えについては却下し、救済命令の一部取り消したが、本件が不当労働行為であると判断した原判決を支持する判決を言い渡した。 
判決主文  1 都労委平成8年(不)第69号事件について平成13年3月27日付でした命令を取り消す。
2 訴訟費用のうち、参加によって生じた費用は参加人の負担とし、その余は被告の負担とす る。 
判決の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
支部定期大会に向けた名古屋、東京等の各分会総会での代議員選出にあたり、会社の名古屋支店等や各営業所における職制等による言動は、上部団体の運動方針を支持するグループの組合活動を阻害するものであり、会社の意向として行われたものと推認できること、さらに、職制等の言動の内容、時期等を総合すれば、これらの言動が使用者側に許された言論の範囲を超えるものであるから、組合内の特定のグループの活動を抑圧するために行った支配介入であり不当労働行為に当たるとした原判決は相当であるとされた例。

1300 転勤・配転
3700 使用者の認識・嫌悪
被配転者である組合員8名はいずれも、戦いを外に広げる行動を始めとするA派に属していること、本件配転により8名はいずれも従前と同様の組合活動を行うことについて制約が生じたものと推認されること、会社はA派の組合活動を嫌い、上記1にある支配介入を行っていること等から、本件配転は組合員8名の組合活動を嫌い、これを事実上困難にするために行った支配介入であると認めた原判決は相当であるとされた例。

6140 訴の利益
被配転者のX2はいったん定年退職した後特別社員となっているところ、特別社員とは会社を定年退職した後引き続き再雇用され、60歳を限度として1年ごとに雇用期間が後進される従業員をいい、この特別社員の地位にかんがみると、同人が原職又は原職相当職に復帰することが客観的に不可能であるとはいえず、会社が同人に対しこの措置を執ることを命じた主文がその基礎を失ったとは未だいえないから、このことの取消を求める部分の訴えの利益がないとはいえないとされた例。

5145 救済内容が実現不可能
6355 その他
被配転者のX3は、本件命令発出後に定年退職した後特別社員となった者であるが、同人は特別社員としての雇用も終了していることが認められ、同人がもはや原職又は原職相当職に復帰することは客観的に不可能であり、会社が同人に対しこの復帰措置を執ることを命じた主文はその基礎を失い、会社はこれに従う義務がなくなったものというべきで、これの取消を求める部分は訴えの利益を欠くことになるから却下を免れないとされた例。

1600 休暇の取扱い
1604 その他
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
会社における時間内組合活動休暇の従前の付与状況、会社がA派に属する組合員ら5名に対して時間内組合活動休暇を付与しないことに至った経過、同人らに時間内組合活動休暇を付与せず、かつ賃金カットを行ったことによって被る不利益、会社による支配介入行為等の時期と時間内組合活動休暇付与問題の生じた時期とが近接していること等に鑑み、会社が、組合員ら5名について時間内組合活動休暇の付与を認めなかったこと等は、A派に属する組合員ら5名の活動を抑圧することを企図して行ったものと認めることができ、このことは組合員ら5名に対する不利益取扱いであるとともに、組合に対する支配介入として不当労働行為に当たるとした原判決は相当であるとされた例。

1202 考課査定による差別
会社の人事給与制度を外形的にみれば、職能資格制度として一定程度整備されたものであるといえるが、制度の具体的運用において最終評定決定者の主観ないし恣意の入り込む余地が相当程度あることから、会社の職能資格制度は、制度の具体的運用において評定者の恣意的運用を阻む程度にまで確立されたものといえないと判断でき、最終評定決定者の常務会が行った組合員ら17名にかかる人事考課は、第一次評定及び第二次評定そのものの正確性に疑問が残る上、少なくともその調整をした上でされた最終評定決定は、組合活動を嫌悪し、その活動を弱体化させることを企図してされた恣意的な判断の下に同人らを殊更に低く評価したものと言わざるを得ず、この低評価に基づき組合員らの賃金、賞与、職能資格格付け及び職位が他の社員に比べ低位に置かれているのであるから、組合員らに対する不利益取扱いであり、かつ、組合の運営に対する支配介入に当たるとした原判決は相当であるとされた例。

6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
労働委員会による救済命令発令の趣旨、労働組合法7条1号の解釈に徴して考えると、労働委員会は使用者が不当労働行為意思をもって不利益な取扱いをした事実を認定することができれば、合理的な是正措置を決定するために必要な事実を職権で調査し、裁量により個々の事案に応じた適切な是正措置を決定することができると解するのが相当であり、使用者が救済対象者と同年同期入社者の業績等を疎明して救済対象者の業績等が相当劣っていることを示す等評定内容に関する具体的事情を疎明せず、労働委員会には使用者の指摘するような実態があるのか分からない場合には、労働委員会は判明しているそれ以外の事情を検討して必要かつ最低限の救済措置の内容を決定することができるものと解するのが相当であり、会社からそのような立証があったとはいえない本件において、本件命令が救済対象者18名の賃金及び賞与について、人事考課査定の中間評価であるCとして再査定して昇給させ、既支給額との差額を支払うことを命じたことは労働委員会の裁量権の範囲内であると解するのが相当であるとされた例。

6221 不利益取扱い
6225 労委審査手続上の適法要件
使用者は、人事権に基づき、それに相応しい者のみを昇格・昇進させ、適当な内容の職務に充てて権限を付与することができるもので、一定の経営上の裁量権があるから、労働委員会が使用者に不当労働行為がある場合の救済方法を検討するに当たっても、使用者の有するこの人事権に配慮すべきであり、労働委員会の採った救済方法が使用者の人事権を不当に制限するものであるときは、労働委員会に委ねられた救済方法を逸脱ないし濫用するものとして違法となると解すべきであるとされた例。

6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
労働委員会は、昇格に関して不当労働行為を行った使用者が、救済対象者となる同年同期入社の業績、能力等を開示せず、そのため是正に必要な資料が得られない場合、救済措置の内容につき、例えば最も遅く昇格した者の待遇を基準にしなければならないというような制約を受けるものではなく、会社では、昇格は職能資格ごとに決定されることから、昇格格差是正のため、職能資格格付け及び職位を同年同期入社者に遅れないように命じることも職能資格及び職位の運営の実態、職位の権限や職務の内容に照らして、これが使用者の人事権を著しく不当に制約するものでない限り、その裁量権の範囲内として許されるべきであるとされた例。

6355 その他
会社は、能力等において著しく劣るなどの特段の事情のない限り、一定年齢以上の従業員に対しては、人事権による裁量権を行使して、少なくとも課長格への昇格については、従業員を経済的に処遇することを目的として年功序列的色彩を残して行っていたものと推認できるが、副部長格以上への昇格は、その応答する主な管理職の職位と権限、組合員資格等を考慮すると、会社の基幹職員であるべき管理職らに相応しい適者を、会社経営の観点から人事権による裁量により選抜する要素が強くなり、従業員を経済的に処遇する観点を強く有して運用していたとまで推認することはできず、救済対象者に課長格の範囲まで同年同期入社者に遅れないよう取り扱うよう命じても会社の人事権を不当に制約するものとまで認めることはできないが、副部長格への昇格は、会社の人事権を著しく不当に制約するものにほかなく、本件命令中、これを命じた部分は違法ということになり、取消しを免れないとされた例。

5200 除斥期間
5201 継続する行為
人事考課の評定結果及びこれに基づく毎月の賃金支払いは、年度ごとに異なる行為であり、次の発令時期までの1年間に限り継続するものであるから、最終支払時期から1年の申立期間内に救済申立てがなされた分の賃金差別に係る救済申立ては適法であるが、その期間を徒過した分の申立ては不適法であり、また、賞与についても支給された後1年以内になされた申立てについては適法であるが、その期間を徒過した分の申立ては不適法であるとされた例。

5200 除斥期間
5201 継続する行為
配転命令はそれ自体が一個の独立した行為であり、そこに労組法27条2項の「継続する行為」なるものを推定することはできないから、9名の各配転に係る救済申立ては、その配転の時期に照らし、いずれも同法27条2項所定の1年の申立期間を徒過してなされたものであって不適法であるとした原判決は相当であるとされた例。

6355 その他
会社が、組合員らに関しその賃金、賞与について不利益に取り扱い、組合支部の運営に介入した不当労働行為の事実が認められることからすれば、労働委員会が不当労働行為によって生じた状態の原状回復を図るためにする救済方法としては、これら職能資格格付け及び職位を課長格への昇格及びその応当職位までの限度で考慮した上で是正をすべきであるところ、本件命令は、課長格への昇格及びその応当職位等を考慮した上での救済申立てを棄却しているのであるから、その部分については裁量権を逸脱ないし濫用したものとして取消を免れないとした原判決は相当であるされた例。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2004年3月10日 1023号 44頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委昭和58年(不)第103号
東京地労委昭和59年(不)第18号
東京地労委平成 3年(不)第72号
東京地労委昭和59年(不)第70号
東京地労委平成 1年(不)第76号
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 8年 1月23日 決定 
中労委平成 8年(不再)第6号
中労委平成 8年(不再)第7号
一部変更(初審命令を一部取消し)  平成10年 1月21日 決定 
東京地裁平成10年(行ウ)第44号 救済命令の一部取消し  平成13年 8月30日 判決 
東京高裁平成15年(行ノ)第203号 その他  平成15年12月22日 判決 
最高裁平成16年(行ツ)第31号 上告の棄却  平成16年 6月29日 判決 
最高裁平成16年(行ヒ)第34号 上告不受理決定  平成16年 6月29日 判決 
最高裁平成16年(行ヒ)第35号 上告不受理決定  平成16年 6月29日 決定 
 
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