労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  京浜特殊印刷 
事件番号  東京地裁平成15年(行ウ)第57号 
原告  株式会社京浜特殊印刷 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会 
被告参加人  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会京浜特殊印刷分会 
判決年月日  平成16年 1月15日 
判決区分  請求の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、組合の分会長X1に対し配転及び自宅待機等を命じたことが不当労働行為であるとして争われた事件であり、初審神奈川地労委が救済命令を発したところ、会社がその取消しを求めて中労委に再審査を申し立て、中労委は再審査申立てを棄却する旨の命令を発したので、会社が命令の取消しの訴を提起した事案であり、東京地裁は、会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  4820 単一組織の支部・分会等
4833 組織の消滅(含1人組合となった場合)
5140 資格審査
労働組合法の定める労働組合は、団体性を要件とするが、団体性を有していた労働組合の構成員が、一時的に1人となった場合であっても、組合員増加の一般的可能性がある限り、団体性は失われないと解され、本件分会が、初審結審時点において3名の構成員を有し、神奈川地労委の資格審査においても労働組合の資格が肯定されていること、その後分会員は一名なったのは会社による一連の不当労働行為が影響しており、救済命令が履行されることにより組合員が増加する一般的可能性があると認められることから団体性は否定されず、また、本件地連及び分会の組合規約には職業的会計監査人の証明書を会計報告に添付して会計報告を行うことが記載されており、労働組合法5条2項7号の要件にかけるところはなく、地連及び分会が同規約を履行しないとしても、それにより不当労働行為救済申立てが権利濫用若しくは信義則違反となるものではないとされた例。

1300 転勤・配転
いきなり夜勤から昼勤への異動を命じるX1分会長に対する本件配転命令は、経済的に、その日常生活の上でも不利益となるものであり、分会を公然化した直後に社長が配置換えを告げ、翌日には正式に配転を命じていること、社長は地連に加入し、他の従業員に対し、組合加入等の働きかけについて認知し、目が届き管理できる昼勤に異動させる必要を感じていたこと等からすると、労働組合法7条1号の不利益取扱いに該当するとともに、X1分会長を夜勤の労働条件変更に対して不満が潜在する可能性のある夜勤従業員から切り離し、その組合活動を看視下におくことによって、分会勢力の拡大を抑止することを企図したもので、同条3号の支配介入に該当するとされた例。

2251 一方的決定・実施
会社は、地連及び分会からの本件団交申入れに一切応じておらず、Y1社長は3名の分会員以外は会社の方針を支持しているとか、分会の要求を容れることは経営上不可能であるなど理由を述べているが、これが団体交渉を拒む正当な理由とはならず、また会社は地連及び分会からの申入れのあった賞与以外の議題に関しても一切の団体交渉に応じておらず、およそ団体交渉に応じる意思を有していないことは明らかであるし、会社が一方的に支給した賞与を分会員がとりあえず受領したからといって、それが当然に支給済みの賞与に関する団体交渉を拒む正当な理由とはならないから、本件団体交渉に応じないことは、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するとされた例。

2620 反組合的言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
本件社長文書には、ことさら地連・分会やX1分会長を誹謗する表現や従業員の反組合感情を煽る表現、あるいは威嚇ともとれる表現が含まれ、分会が公然化した1ヶ月余りを経た時点において社内に掲示されたものであること等からすると、同文書の掲示は、分会の結成及びその活動を嫌悪した会社が、分会勢力が従業員の間に拡大することを恐れ、その活動を抑制する目的でなされたものと推認することができ、その記載内容も客観的事実とは言い難いから、当該行為は労働組合法7条3号の不当労働行為に該当するとされた例。

2803 その他
従来、賞与支給時に一定範囲の従業員に対し、賞与とは別に一律に金員が支給された例は認められず、本件社長による「金一封」の支給は、分会の活動に同調する従業員が増えることを危惧した会社が、分会らとの団体交渉を経ることなく一方的に支給した賞与について、非組合員の理解を求めると同時に、会社が一方的に実施した夜勤の勤務時間等の労働条件変更について、夜勤従業員の不満を吸収し、慰撫することによって、分会の活動を無力化させ抑制する意図で行ったものと推認され、社長の単なる私生活上の行為とはいえないから、本件金員の支給は、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
「労働形態の現状維持」への賛同を求める本件署名活動は、従業員に組合活動に対して反対するという経営側の態度に賛同を求める内容である点で本件社長文書と同趣旨のものであると認められること、本件署名活動が、本件社長文書の掲示から10日後、社長による「金一封」の支給の3日後という時期になされていること、会社の職制である機長あるいは係長によって就業時間中に署名活動が行われたこと、X1分会長は、本件賛同文書を原告の印刷責任者であるY2課長から入手し、その際、同文書に対する署名を肯定する旨の発言があったこと、機長や係長らが本件署名活動を実施し、集められた署名が会社から神奈川地労委に提出されているのに、会社は本件賛同文書の作成者を明らかにしてないことからすれば、本件署名活動は分会の結成及びその活動を嫌悪し、その活動を抑制しようとする会社の意を受けて行われたものと推認でき、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

0125 組織・職場活動(含証人の行為)
0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1302 就業上の差別
1400 制裁処分
1603 組合活動上の不利益
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X1分会長に対する本件自宅待機命令は、就業規則上の根拠を欠き、しかもその理由とする職務専念義務及び職場秩序遵守義務違反は認められず、処分の必要性及び相当性を欠くものであり、また残業手当や賞与の支給を受ける機会が奪われるという経済的不利益を生じさせるにとどまらず、会社施設への立入が禁止されたことにより、会社内での他従業員との接触ができず、組合活動が行えなくなるという組合活動上の不利益を生じさせるものであるから、労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

3900 「不利益の範囲」
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
X1分会長が従前の職務を継続して遂行したと仮定した場合の賃金相当額を、会社において算定することは困難とはいえず、また本件のような賃金差額の支払のみでは原状回復されないと判断される場合に、加算金の支払を命ずることも労働委員会に認められた裁量の範囲内にあるものと認められた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2004年10月10日 1033号 35頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
中労委平成13年(不再)第38号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成15年 1月15日 決定 
東京地裁平成15年(行ク)第234号 全部認容  平成16年 1月15日 決定