労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  湘南工科大学 
事件番号  東京高裁平成14年(行コ)第141号 
控訴人  学校法人湘南工科大学 
被控訴人  中央労働委員会 
被控訴人参加人  X1 外2名 
被控訴人参加人  湘南工科大学教職員組合 
判決年月日  平成16年 3月17日 
判決区分  控訴の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、法人が、大学の助教授である組合員3名を教授へ任用しないことは組合員であること等を理由とする差別取扱いであるとして救済を申立てた亊案であり、初審神奈川地労委が救済命令を発し、法人が再審査を申し立てたが、中労委は初審命令を概ね維持し、再審査申立てを棄却する旨の命令を発した。法人は、同命令の取消しを求める訴えを提起したが、東京地裁は、請求を棄却し、法人が東京高裁に控訴したが、東京高裁は、控訴を棄却した。
 なお、本件第一審の審理中に上記3名のうち組合員1名が法人を退職し(ただし、訴訟には参加し、本件命令が維持されることを求めていた)、また、本件第一審判決の直後に組合委員長でもあるX1が懲戒解雇されたが、X1はこれを争い、横浜地裁は雇用契約上の地位にあることを仮に定める旨の決定を行っている。 
判決主文  本件を上告審として受理しない。
 申立費用は申立人の負担とする。 
判決の要旨  2130 雇用主でないことを理由
本件大学における教授は、その職務の遂行に当たっては、裁量の範囲があり、その自主的判断に委ねられている部分があるが、全体としては、控訴人の管理監督の下にあり、その労働の対価として報酬を得ているものというべきであり、「職業の種類を問わず、賃金、給与その他これに準ずる収入によって生活する者」であって、労働組合法上の労働者に当たると解すべきであるとされた例。

4825 その他
大学は、その就業規則において、教授は管理職である旨規定しているが、これは教授の職務ないしその一環として、助教授の指導監督に当たるとともに学科長又は課程主任の職務を助ける立場を意味するとしても、労働組合法2条但書1号の「使用者の利益を代表する者」に該当することを意味するものとまでは解されず、また大学における教授は、教授その他の教員の任用についてみれば、教授会の議を経て、理事長がその任用を行う際に、その教授会の議に参加する立場にあるが、この立場は、教授その他の教員の選考に関する大学の意思形成に関与するものにとどまるものであって、かかる教授会の構成員であることのみをもって直ちに労働組合法2条但書1号の「使用者の利益を代表する者」とは認められないとされた例。

5004 管理職への登用の請求
大学は助教授が教授に昇任することは、いわゆる新規採用に当たり、不当労働行為制度の適用はないとするが、助教授から教授への昇任は、教授会の議を経て行われ、助教授全員が必ず教授に昇任されるものではないものの、大学の就業規則及び給与規程の定め方並びにその実際の運用状況からすれば、給与規程の定めるとおり、助教授以下の教職員も、一定年限の経験年数及び在級年数を充たせば、昇格の対象とされており、昇任の場合は、その手続及び等級の位置づけも給与規程に基づいて取り扱われており、退職金も在職期間を通算して算出されるのであり、これらに鑑みると、助教授から教授への昇任を新規採用と同一であるとまでいうことはできず、助教授から教授へ昇任しない行為も不当労働行為の対象となり得るものと解すべきであるとされた例。

5008 その他
大学の自治といえども無制限に認めれられるものとは言えず、大学がその自治として行うことが認められる教授その他の研究者の任用人事に関する事項であっても、それが不当労働行為制度がその保護の対象とする労働組合活動及び労働者の地位を侵害するものとなるときは、一般市民法秩序と直接に関係を有するものとなることは避けられないのであって、このような場合、不当労働行為に関する労働委員会の審査権限は、そのような侵害が問題となる範囲内の事項に対し、その問題となる限度で及ぶものと解するのが相当であるとされた例。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員3名は、選考委員会で教授として適格であると審査され、教授会の議、推薦手続を経て、同時期に推薦された他の者は、退職した者を除きすべて教授に昇任されており、これまで推薦された者で教授に昇任されなかった者は、退職した者及び同人ら3名以外にはいないこと、教授に昇任された者は1名を除き全員が昇任の直前か直後に組合から離脱している上、学長あるいは大学は、組合員は教授にしないとの方針を持ち、これを公然と明らかにしていること等に照らすと、組合員3名を教授に昇任させないのは、同人らが組合に属すること及びその組合活動を行っていることの故であり、同人らに対する不利益取扱いであり、組合に対する支配介入であるとされた例。

5004 管理職への登用の請求
大学は組合員3名に対し、長く教授に任用しないことにより、労組法7条1号及び3号の不当労働行為をしたのみならず、組合らがこれらの長期にわたる明らかな不当労働行為に対し労働委員会に救済を申し立てたのに対しても、この申立てをしたことを理由に理事会見解の掲示等をすることにより同条3号及び同条4号の不当労働行為をするとともに、教授会をして本件推薦取下げ等の決議をさせることにより同条1号及び同条3号の不当労働行為を行ったばかりか、組合らに対し、救済申立を取り下げれば新年度から教授への昇任を示唆するなどして、不当労働行為の救済申立ての取下げを迫るという行動を継続したと認められ、以上のような大学の本件における組合らに対する労働組合法違反の行動に徴すると、労働委員会が、大学に対し、かかる参加人3名について、不当労働行為がなかったならば、それまでに昇任したであろうと認定し得る平成3年4月1日付けをもって教授として任用されたと同様の取扱いを命ずるとしても、大学における学問の自由の保障の関係では、実質的な影響を何ら生じさせず、むしろ大学による本件の特異かつ異常な労働組合違反の事実に対し、その違反の結果の是正として、組合らに対し認められるべき救済を相当の範囲内の裁量により具体的に定めて命令するものと評価し得るものであるとされた例。

4000 退職金等の受領
教授の任用は、本件大学の助教授等に限定されているわけではないから、組合員X2が本訴に参加し、本件命令が維持されることを求めている事実に鑑みても、大学を退職したことをもって、大学の教授として扱うことが当然に不可能となるものとはいえず、また同様に組合員X1は、本訴の原判決言渡しの後、懲戒解雇されているが、同人はこれを争い、横浜地方裁判所は、同人が大学との間で、雇用契約上の地位にあることを仮に定める旨の決定を行っていることからしても、その懲戒解雇の意思表示がされた事実は、本件判断を左右するものではないとされた例。

業種・規模  学術研究機関 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2004年11月10日 1034号 33頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
中労委平成 7年(不再)第52号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成12年 2月16日 決定 
東京地裁平成12年(行ウ)第115号 請求の棄却  平成14年 4月24日 判決