労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  神奈川県厚生農業協同組合連合会 
事件番号  東京地裁平成14年(行ウ)第350号 
       平成14年(行ウ)第352号 
原告  神奈川県厚生農業協同組合連合会(352号事件補助参加人) 
被告  中央労働委員会 
補助参加人  神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合(352号事件原告) 
判決年月日  平成16年 1月28日 
判決区分  救済命令の一部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、連合会が、(1)薬剤師である組合員X1を病院薬局長から本所資材課長に配置転換したこと、(2)組合員に対して脱退を勧奨したこと、(3)組合の教宣活動や組合役員選挙に介入したこと、(4)組合専従者が出席することを理由に団体交渉を拒否したこと、(5)第二組合の結成を支援したこと、(6)「チェック・オフ中止願い」を組織的に提出させた上、組合員のチェック・オフを中止したこと等が不当労働行為に当たるとして争われた事件で、初審神奈川地労委は、これらの行為はすべて不当労働行為に該当するとして、救済命令を発したが、中労委は初審命令のうち、組合員X1に対する本所資材課長への配転、第二組合の結成の支援、チェック・オフの中止は不当労働行為に当たらないとしたほかは初審命令を維持する命令を発した。連合会及び組合は、これを不服として行政訴訟を提起していたが、東京地裁は、中労委の命令中、連合会が組合役員選挙に介入したとして救済を維持した部分を取り消し、その余の請求を棄却した。 
判決主文  1 本件申立てを却下する。
2 申立費用は、申立人の負担とする。 
判決の要旨  6330 審査手続の違法
労働委員会は、命令を書面によって発しなければならないが、救済申立てが事件として別個に立件された場合に、これを一通の命令書で発することかできるかについては、労組法及び労委規則に格段の規定はなく、労働委員会は複数の申立て事件について審査を併合しないまま、これを一通の命令書で命令を発することも、命令の目的を損なうような特段の事情のない限り、労働委員会の裁量の範囲内であるとして許されると解するのが相当であり、本件命令では、第一事件と第二事件の双方の主張及びこれについての立証を区別し、それぞれについて認定・判断がされていることからすれば、命令の目的を損なう特段の事情があるとはいえず、中労委の審査手続に手続上の違法があるとはいえないとされた例。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
病院の薬局長であったX1を資材課長に配置転換した本件配転については、前任者が退職することから後任を補充する必要があり、その業務を遂行するためには医薬品についての豊富な知識が必要であったこと、本件配転でX1の通勤時間が10分長くなった以外には勤務条件の上での不利益は認められないこと等からすると、その必要性、合理性が十分にあるから、本件配転による組合員X1の組合活動上の不利益を考慮しても、本件配転がX1の組合活動を抑制し、組合を弱体化することを決定的な動機としてされたものとまでいうことはできず、会の組合に対する支配介入であるとすることはできないとされた例。

2620 反組合的言動
会が、「組合への加入脱退は会が関与することではないので、組合員の自由意志とする。組合員が会に組合を脱退した旨を言ってきた場合、会は組合に確認し組合より脱退の通知があった者だけをチェック・オフしないこととする。」との見解を示したことは、組合員の組合からの脱退を容易にするものであり組合の運営や活動について組合に不利な影響を与えたものということができるが、組合員を威嚇したり、組合からの脱退について利益を供与するといった態様のものではないことからすれば、組合に対する支配介入であると認められないとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会がチェック・オフ中止依頼者のチェック・オフを中止する旨一旦表明したり、これらの者のチェック・オフ金のプールを開始したりしているが、組合員が使用者にチェック・オフの中止を申し入れたときは、使用者は当然組合員のチェック・オフを中止すべきであるから、会のこれらの対応を非難すべきものとはいえず、会のチェック・オフに関しての一連の対応から、チェック・オフ中止を利用して脱退勧奨を行ったとまではいえないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
課長が職場で勤務時間中に部下に対し、「労働組合やめちゃえよ。」と組合からの脱退を勧奨する発言をすることは、一組合員としての個人的な行為とみなすことはできず、管理職としての行為と見ざる得ず、Y1課長の右発言は、会の意を体して行われた行為で会がその責任を負うべきものであるとされた例。

5201 継続する行為
組合が主張する総婦長らの発言は、いずれも行為の時から1年以上経過して救済申立てがなされており、これらの発言が他の婦長らの発言と同一の意思に基づき継続して行われたことを認めるに足りる証拠はないから、この発言について不当労働行為を認めなかった本件命令に誤りはないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
Y2婦長のX2看護婦に対する、「X2看護婦の朝礼での発言はみんなを扇動している」、「組合は既に決まっていることでも組合が勝ち取ったように宣伝する」等の発言は、その経緯、発言の内容からして部下であるX2看護婦が職務中に組合の立場で発言したことについて感情的になり、組合に対する批判に及んだものと見ることができ、この発言が会の意を体してされた発言とまで評価することはできないから、同発言を会の組合に対する支配介入とすることはできないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
Y3参事がY4次長及びY5次長に組合役員選挙への立候補を勧めたこと、Y6課長が反執行部の姿勢を鮮明にしているY4次長やY1課長への投票を勤務時間中に呼びかけたことをいずれも認定することはできず、またY7婦長がY4次長、Y1課長への投票を勧める文書を配布したことについては、同人は、組合脱退届を提出していることからして反執行部の立場をとっているといえるところ、なお組合員であるから、会の意を体したものとまで評価することもできず、会が組合員役員選挙に干渉したとはいえないから、これを不当労働行為であると判断した本件命令は取消を免れないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
3410 職制上の地位にある者の言動
組合専従者は、支部交渉に出席しないとの慣行はなかったこと、組合が団体交渉を委任する者の範囲については、労組法上格別制限はないことからすれば、会が支部交渉に組合専従者の参加を認めないことに正当な理由があるとはいえず、会が慣行を理由に組合専従者の支部交渉への出席を拒むことは許されないというべきであり、Y8事務長の対応は、本来労働組合が自主的に決定すべき団体交渉の出席者に不当に注文をつけることにより、組合の運営に介入したものであって、労組法7条3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
Y9婦長が、X3看護婦に対して看護委員会での発言及び寄稿した組合機関誌の記事内容についての非難は、管理職である婦長が組合活動を直接批判し、また職制の圧迫によって組合機関誌活動に制約を与えようとしたものといわざるを得ず、当時、会と組合は対立関係にあったこと、Y9婦長は非組合員である管理職であること、同言動はX3の勤務終了直後に職場内で行われていることからすれば、同言動は、会の意を体して行われたものといえ、会は責任を負うべきであって、会の組合に対する支配介入に当たるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
組合からの脱退は自由であり、脱退に組合の承認を要することは無効である等とする判決文を管理職である婦長らが、意識的に組合員に示すことは、判決文の内容からして、組合員に脱退の意思を持たせるような効果をもたらそうとするものと言わざるを得ず、会と組合はチェック・オフを巡って対立関係にあったこと、婦長らの行為は職場内で行われていること、婦長の権限等を考慮すると、Y10婦長及びY2婦長の右言動は、会の意を体して行われたものといえ、会が責任を負うべきものであるから、会が組合員に対し組合からの脱退を勧奨し、組合運営に介入したものというべきであるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
チェック・オフ協定が締結されている場合でも、組合員が使用者に対しチェック・オフの中止を申し入れたときは、使用者は当該組合員に対するチェック・オフを中止すべきものであり、その場合であっても組合費をチェック・オフした以上それを組合に引き渡さなければならないとはいえないし、また、チェック・オフを中止する以上、チェックオフした組合費はチェック・オフ中止を申し入れた組合員に返還すべきものであるから、会がチェック・オフした組合費をプールしたことやプールしていた組合費をチェック・オフ中止を申し入れた組合員に返還したことを組合との関係で非難することはできず、これらを会の組合に対する支配介入と認められないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
会は、本来、内部告発で指摘された事実の有無について不正を正す観点で調査し、調査結果について職員に十分説明すべき立場にあるところ、院長や事務長の発言は、内部告発で指摘された事実の有無やその問題点を明確にしないまま、内部告発それ自体を問題視した上、組合を告発者として非難することにより問題の責任が組合にあるとして、組合員を組合から離間させようとしたものと言わざるを得ず、使用者に許された意見表明、反論の自由の範囲を超えたものであるというべきであり、また、婦長及び副看護部長の新人看護婦に対する言動は、脱退勧奨発言であり、会の意を体した行為で責任を負うべきものであるから、これら言動は、会による支配介入に当たるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2611 その他の従業員の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
内部告発に関し開催された組合説明会における組合幹部に関するY11婦長及びY12主任の発言は、いささか不穏当なものであるが、同発言は組合活動の場での発言であること、内部告発を巡って様々な噂、意見があったこと等からすると、会の意を体して行われたものとまでは評価できず、全体としてみれば、X1書記次長個人を誹謗するというよりも組合が内部告発を行ったとして組合を誹謗するところにその主眼があると解されるから、これらの発言がX1個人を誹謗中傷する不当労働行為であるとまではいえないとされた例。

2500 別組合の結成・援助
2501 親睦団体の利用
病院を守る会あるいは別組合の結成を会が指示して行わせたことを認めるに足りる十分な証拠はなく、当時、多くの職員が会の今後について危機感を抱いていたことや、組合内部にも組合執行部の運営の仕方について批判的な意見もあったことからすれば、会が第二組合づくりに関与して組合の運営に介入したとまではいえないとされた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2004年9月10日 1032号 61頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
神奈川地労委平成 9年(不)第12号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成11年 5月25日 決定 
中労委平成11年(不再)第28号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成14年 7月17日 決定 
東京高裁平成16年(行コ)第82号 一部取消  平成18年 3月22日 判決