労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 東海旅客鉄道(掲示物撤去)
事件番号 東京高裁平成18(行コ)155号
控訴人兼被控訴人(第1審原告) 東海旅客鉄道株式会社
被控訴人兼控訴人(第1審被告) 国(処分行政庁 中央労働委員会)
第1審被告補助参加人 ジェイアール東海労働組合
ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部大阪第一車両所分会
判決年月日 平成19年8月28日
判決区分 一部取消
重要度  
事件概要  本件は、補助参加人組合が原告に対し、補助参加人組合分会の掲示板からの掲示物撤去が不当労働行為であるとして争われた事件である。
 被告処分行政庁である中労委は、原告の不当労働行為を認め原告に対し謝罪文の手交を命じたが、これを不服として、原告が東京地裁に行政訴訟を提起した。
 同地裁は、中労委の救済命令のうち一部を取消した。 これに対し、会社及び国が東京高裁に控訴したところ、同高裁は、原判決中、掲示物に係る一部について本件命令を取り消した部分の一部を取り消し、会社の控訴を棄却した。
判決主文 1 第1審被告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1)中央労働委員会が中労委平成10年(不再)第34号不当労働行為再審査申立事件について、平成17年5月11日付けでした命令のうち、主文Ⅰ項1の次の部分を取り消す。
   第1審原告の新幹線鉄道事業本部関西支社大阪第一車両所が、第1審補助参加人ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部大阪第一車両所分会の組合掲示板から、平成7年7月4日に原判決別紙3の掲示物を撤去した行為、同月31日及び同年8月1日に原判決別紙5の掲示物を撤去した行為が、中央労働委員会によって労働組合法7条第3号に該当する不当労働行為であると認定され、今後このような行為を繰り返さないようにすることを記載した文書を第1審被告補助参加人らに対し手交することを命じた部分。
(2)第1審原告のその余の請求を棄却する。
2 第1審原告の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じ,補助参加によって生じた部分はこれを10分し、その9を第1審原告の、その余を第1審被告補助参加人らの負担とし、その余の費用はこれを10分し、その9を第1審原告の、その余を第1審被告の負担とする。
判決の要旨 「不当労働行為の判断基準について」          
① 掲示物の撤去が不当労働行為に該当するか否かの判断に際しては、基本協約の撤去要件に該当するか否かをまず検討すべきであり、会社が撤去要件に該当しない掲示物を撤去した場合には、組合活動に対する支配介入として不当労働行為に当たるというべきであるが、会社が撤去要件に該当する掲示物を撤去した場合には、不当労働行為には該当しないというべきである。なお、撤去要件の該当性を判断するに際しては、当該掲示物が全体として何を伝えようとし、訴えようとしているのかを中心として、実質的に撤去要件を充足するか否かを考慮すべきであり、掲示物の記載内容のうち、細部もしくは個々の記述又は表現のみを取り上げ、あるいは撤去要件に当たる箇所の分量だけから全体的な撤去要件に充足性を判断するべきものではない。
② 基本協約に撤去要件が規定された趣旨に照らせば、掲示物の記載内容の一部が形式的に撤去要件に該当するとみられる場合であっても、そのことの一事をもって当該掲示物全体として撤去要件を充足するものというべきではなく、正当な組合活動として許容される範囲を逸脱し、会社の運営等に支障を与え、あるいは個人の名誉を著しく傷つけたか否か等々について、その内容、程度、記載内容の真実性等の事情が実質的かつ総合的に検討されるべきであり、その結果、当該掲示物が不可分一体のものである限り、全体としても、組合の正当な組合活動として許容される範囲を逸脱していないと認められるときは、会社の掲示物の撤去が実質的に組合活動に対する妨害行為として不当労働行為(支配介入)に該当するというべきである。
③ 当該掲示物の掲示が組合の正当な組合活動として許容される範囲を逸脱したか否かを検討するに当たっては、まず、組合と会社との全社もしくは職場での労使関係の状況、掲示物が掲示された経緯に加え、掲示物の記載内容が会社の安全性、顧客へのサービスその他会社の中心的業務自体の信用に関わる性質のものか、対組合との関係において問題となる性質のものか、社外の第三者又は社会全般との関係において問題となる性質のものか、会社内の職員の信用、名誉に関わるものか、当該記載内容がこれらの信用又は名誉をどの程度侵害するものか等々の具体的な事情が考慮されるべきである。次に、右記の判断に当たっては、その文書作成主体と性質如何により、掲示板の設置される場所がどのような場所であり、掲示物の対象たる読者が主としてどのような者か等の具体的事情も、軽視しがたい要素として、勘案考慮されるべきである。
④ 掲示板の設置場所等からすれば、本件掲示板の掲示物は、掲示板移設の前後を通じ、一般第三者に閲覧されることを予定しておらず、一般第三者が閲覧する可能性は否定しがたいものの、その機会は必ずしも多くなかったことがうかがわれるのであって、設置場所に関する個別の事情は、会社の信用毀損、個人の誹謗、事実違背等の事実の有無、程度等に関して影響を与えるべき事柄として、これを斟酌すべきものというべきである。
   なお、本件基本協約には、過去の手順又は手続についての定めはなく、掲示物が撤去要件に該当する場合は正当な組合活動のために掲示板を使用するものではないから、会社は原則として直ちに撤去できるものといわざるを得ない。会社が撤去に先立ち、組合に対し自主的な撤去を求める等、その対応に係る時間的余裕を配慮する等の措置を事実上講じることは、掲示物貸与に係る本件基本協約の円滑な運用を図り、現場における混乱を回避するための工夫として一定の効果を果たしていたことが認められる。
   
「上記の判断基準を前提として、本件の掲示物が組合の正当な組合活動として許容される範囲を逸脱していないと認められるか否かについて」」
 本件掲示物①、③、⑤ないし⑨、⑪ないし⑭の撤去のうち、本件掲示物③及び⑤の撤去は組合に対する不当労働行為(支配介入)に該当しないが、その余の掲示物の撤去は不当労働行為(支配介入)に該当するというべきである。したがって、本件掲示物③及び⑤の撤去が不当労働行為に該当するとした本件命令の判断は誤りがあるので、本件命令は、本件掲示物③及び⑤に係る部分の程度で取り消すのが相当である。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成7年(不)第78号 一部救済 平成10年9月29日
中労委平成10年(不再)第34号 一部変更 平成17年5月11日
東京地裁平成17年(行ウ)第308号 一部取消 平成18年5月15日
最高裁平成19年(行ツ)第316号
平成19年(行ヒ)第347号
上告棄却、不受理 平成20年11月25日
 
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