労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  協和出版販売
事件番号  東京地裁平成18年(行ウ)655号
原告 協和出版販売株式会社
被告 国(裁決行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 日本出版労働組合連合会
被告補助参加人 協和出版販売労働組合
判決年月日  平成19年9月26日
判決区分  棄却
重要度   
事件概要   会社が定年年齢を55歳から60歳に引き上げたことに伴い、55歳以降の組合員の賃金額を55歳直前に比べ大幅に引き下げたことに関し、組合が55歳以降の組合員の賃金について、団体交渉において貸借対照表、損益計算書等の計算書類を開示して具体的に説明するよう会社に求めたのに対し、会社がこれに応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、初審東京都労委は、賃金決定の具体的根拠を説明する資料を提示するなどした誠実団交応諾、文書手交等を命じ、救済申立て時より1年前の団体交渉に係る申立てを却下した。
 会社は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令の却下部分を取り消し、本件再審査申立てを棄却した。会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、参加により請じた費用を含め、原告の負担とする。
判決要旨  1(組合の申入れに対する原告の態度・対応が、労組法7条2号所定の不誠実な団体交渉に当たるか)
 憲法28条により労働者の権利として保障されている団体交渉は、労使が話合いを通じて、相互の理解を深め、労使間に生じる諸問題を自主的に解決するための手続であり、これを受けて、労組法7条2号は、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒むことを不当労働行為として禁止しているが、同号は、労使間の円滑な団体交渉関係の樹立を目的として規定されたものであるから、団体交渉に応ずれば足りるのではなく、使用者は誠実に団体交渉をする義務があり、当該義務を尽くさない場合には、労組法7条2号所定の不当労働行為に当たると解される。そして、使用者が誠実に団体交渉をしたか否かについては、団体交渉申入れの段階における対応、交渉事項の内容、労働者側の態度等の具体的事情に応じて、団体交渉の場において労使の対立点を可能な限り解消させる努力を行っていたか、そのための方法として、労働組合が検討可能な程度の客観的な資料を提示するなどして、自己の主張の根拠を具体的に説明するなど相手方の納得を得るよう努力したかなどの観点から判断するのが相当である。
2(平成12年6月15日の団体交渉について)
 組合らが、商法上、作成及び公示・公告が義務付けられている本件計算書類の提示を要求し、売上金額について質問することは、交渉事項に関する情報提供の求めとしては相当なものであり、会社としても、組合らが検討可能な程度の客観的な資料として、右程度の財務上の資料を提示することにより特段の支障が生ずべき事情も見当たらない。会社は、組合らに何ら客観的な資料を提示せず、売上げ金額等も明らかにしなかったのであるから、上記義務を履行したとはいえず、不誠実な団体交渉をしたといえる。
3(本件初審申立ての後の労使交渉について)
 会社は、本件初審申立て後、組合らと労使交渉をしている。しかし、組合らが、流動資産及び固定資産の具体的内容等について質問したにもかかわらず、会社は回答しなかったり、売上げ及び人件費等の具体的金額を提示するなどして、会社の財務状況に照らして、定年延長後の嘱託給の金額が妥当であるかどうか判断する根拠について具体的に説明したとはいえず、組合らと誠実に交渉したとはいえない。したがって、救済を求める利益は失われていない。会社は、朝礼及び各部署における各会議において、売上げ状況等について説明したと主張するが、これは組合員を含む従業員に対し会社の見解を説明したにすぎず、会社と組合らとの間で、質問、回答、提案等があったわけではないからそもそも交渉であるとはいえないし、この説明が、嘱託給の金額の妥当性を検討し得る程度に具体的な内容と認めるに足りる証拠はない。また、会社は、別件訴訟において、貸借対照表、損益計算書等を書証として提出したことを主張するが、これらの資料に基づいて、質問、回答、提案等のやりとりをしたわけではなく、団体交渉をしたことにはならない。
 以上によれば、本件申入れに対する会社の態度・対応が、労組法7条2号の不誠実な団体交渉に当たるというべきであるから、本件処分は適法である。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京都労委平成13年(不)第21号 一部救済 平成17年11月15日
中労委平成17年(不再)第85号 一部変更 平成18年10月18日
東京地裁平成19年(行ク)86号 緊急命令申立ての認容 平成19年9月26日
東京高裁平成19年(行コ)第367号 棄却 平成20年3月27日
 
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