労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  住友重機械工業
事件番号  東京高裁平成18年(行コ)第235号
控訴人兼(原審)第2事件参加人((原審)第1事件原告・第2事件参加人) 住友重機械工業株式会社
被控訴人東京労働委員会補助参加人兼控訴人((原審)第2事件原告・第1事件被告補助参加人) 全日本造船機械労働組合住友重機械・追浜浦賀分会
個人3名
控訴人(原審第2事件原告) 個人9名
被控訴人((原審)第1事件被告・第2事件被告) 東京都労働委員会
判決年月日  平成19年10月4日
判決区分  一部取消
重要度   
事件概要   本件は、会社が、平成元年4月以降、申立人組合の組合員12名に対して職能資格の昇格を差別したことが、不当労働行為であるとして争われた事件である。
 東京地労委は、①組合員3名を平成8年4月1日付で上級職一級に昇格させたものとしての取扱い及びバックペイ、②文書交付、③東京都労委への文書報告、④組合員4名に関する平成7年3月以前の昇格を求める申立ての却下、⑤その余の申立ての棄却を命じたところ、これを不服として、会社は、救済命令を発した部分の取消しを、組合は、申立てを却下、棄却した部分の取消しを求めて、それぞれ行政訴訟を提起していた。東京地裁は、会社及び組合の請求をいずれも棄却した。これを不服として、会社及び組合らは東京高裁に控訴したが、同高裁は控訴を棄却又は却下した。
判決主文  1 原判決主文第2項を取り消す。
2 控訴人組合らの訴えを、いづれも却下する。
3 控訴人会社の本件控訴を棄却する。
4 第1事件に係る控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は控訴人会社の負担とし、第2事件に係る訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)は、第1、2審とも、控訴人組合らの負担とする。
判決要旨  1 本案前の主張について
(1)X組合らの第2事件に係る訴えについて
 ア 第2事件については、取消訴訟を提起するとともに中労委に対し再審査申立てをしたところ、中労委は原判決後にその申立てを一部認容する本件再審命令を発したが、X組合又は労働者は都道府県労働委員会の命令に対して、取消訴訟を提起するとともに中労委に対し再審査申立てをすることができるが、中労委が命令を発したときは、その命令に対してしか訴訟を提起することができなくなり、当該取消訴訟は不適法となり、本件再審査命令が発せられた本件においては、X組合らの第2事件に係る訴えは不適法になったものであり、却下を免れない。
(2)Y会社の第1事件に係る訴えについて
 ア Y会社は、本件都労委命令に対し、再審査の申立てをしないで、取消しの訴えを提起したのであるから、労組法27条の19第1項により同取消しの訴えを提起するのができるのは当然であり、同法27条の19第2号は使用者が初審命令に対し取消訴訟を提起せずに再審査申立てをした場合に、中労委の命令に対してのみ取消訴訟を提起することができることを定めた規定であるから、再審査申立てをしないで行ったY会社の取消訴訟を不適法とするものではなく、本件都労委命令の主文第1ないし第3項はY会社に不利益を与える内容のものであるから、Y会社には本件都労委命令のうち同主文に係る部分の取消しを求める法的利益があるというべきである。
 イ 本件都労委命令は、複数の当事者について発せられたものであって、法的には、当事者事に発せられた命令が一通の命令書に記載されていると解するのが相当であり、本件都労委命令中の組合員X1ら3名に係る部分は、本件再審査命令においても変更等されていないのであるから、労組法27条の15第1項ただし書の規定により効力を失ったと解するのは相当ではない。
 ウ 本件都労委命令は、当事者事に複数の命令がされていると解すべきであるから、再審査の範囲、申立事実の不可分の点を考慮しても、本件都労委命令のうち組合員X1らに係る部分の効力が失われたと解することはできず、再審査と行政訴訟の関係については、Y会社の第一事件に係る訴えを適法と解すると、これと再審査命令に対するX組合及びX1らの取消訴訟とが別個に係属することを認めることになるが、労組法はかかる事態の発生を許容しているというべきである。
 エ 使用者が初審命令に対し取消訴訟を提起した場合も、その後中労委の命令により初審命令の一部が変更された場合には、同変更された部分についての取消訴訟は不適法になるのであって、上記アないしウの判断が公平の原則に反することにはならず、X組合らの他の主張を考慮に入れても、救済命令等は当事者ごとにされていること等に照らすと、Y会社の第1事件に係る訴えを不適法ということはできない。
 オ 以上のとおりであるから、Y会社の第1事件に係る訴えは、適法であって、これに反するX1及びX組合らの主張は、採用できない。
2 Y会社の第1事件に係る請求について
(1)平成元年和解の効力及びその前の昇格状況を審理の対象にすることの是非
  和解は、特段の事情のない限り、その和解の当事者の間で効力が生じるにすぎないところ、組合員X1ら3名は、平成元年和解の当事者になっていないし、和解の対象者にも挙げられていないのであるから、その和解効力が組合員X1ら3名に及ぶと解することができず、本件で判断すべきは、平成8年4月1日に組合員X1ら3名を昇格させない措置が不利益取扱いに当たるか否かであるところ、その判断に際し、右記和解前の昇格情報を考慮することに何ら問題はない。
(2)平成7年4月1日以前の昇格状況を判断の事情に加えることの当否
  平成7年4月1日に組合員X1ら3名を昇格させなかったことが不当労働行為に該当しないとの事実を前提にしたとしても、そのことと、平成8年4月1日に組合員X1ら3名を昇格させないことが不当労働行為に該当するか否かの判断をする上で、平成7年4月1日以前も昇格状況を考慮することとは、矛盾するものではない。
(3)組合員X1ら3名と別組合組合員との昇格格差の存否、不当労働行為意思の存否等
組合員X1ら3名は、「養成工昇格状況」及び「設計関係職場・養成工の勤続年数と昇格者数」から見て上級職3級に昇格してから、他の労働者と比較して昇格が遅れてきていることが認められ、右記表に記載された36名の中で15名が上級職1級に昇格しているにもかかわらず、X組合の組合員が誰も昇格していないことなどの事情を考慮すると、Y会社がX組合を差別的に取り扱っていることを推認することができ、これらの事情を総合すると組合員X1ら3名が平成8年4月1日の時点で上級職1級に昇格できなかったのは、Y会社がX1ら3名がX組合の組合員であるために、昇格差別をしたものと推認するのが相当であり、Y会社は、昇格しなかったのは職能資格要件を満たさなかったからであると主張するが、職能資格要件は厳格に運用されているとは考えられないところであり、また、組合員Xら3名について、平成8年4月1日に上級職1級に昇格した別組合の組合員と比較して、能力・業績において劣っていると認めるに足りる証拠もなく、そうすると、Y会社の主張立証によっても、組合員X1ら3名についての不利益取扱い、不当労働行為意思の存在についての右記推認は、左右されないというべきであり、当審における証拠調べの結果によっても変わらない。
(4)Y会社は、本件都労委命令が人事権に対する過度の介入であって、労働委員会に認められた裁量権を逸脱するものであり、違法である旨主張するが、上級職1級は非管理職の中での昇格であること、本件は上級職1級への昇格が不当労働行為と認定できる事案であるから、救済命令によって、Y会社の人事権が制約を受けるのはやむを得ないことを考慮すると、本件都労委命令が労働委員会に認められた裁量権を逸脱するとまでは認められない。

[先頭に戻る]

顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京都労委平成9年(不)第12号 一部救済 平成13年10月16日
東京地裁平成13年(行ウ)第411号、平成14年(行ウ)第102号 棄却 平成18年7月27日
中労委平成13年(不再)第60号 一部変更 平成18年8月2日
最高裁平成20年(行ツ)第27号
     平成20年(行ヒ)第30号
上告棄却、不受理 平成20年4月18日
東京地裁平成18年(行ウ)第612(第1事件)等・658号(第2事件) 一部取消、棄却 平成20年11月13日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約205KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。