労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名 杉森学園
事件番号 福岡地裁平成19年(行ウ)第64号
原告 学校法人杉森学園
被告 福岡県(代表者兼処分行政庁 福岡県労働委員会)
被告補助参加人 福岡県私立学校教職員組合連合
杉森学園教職員組合
判決年月日 平成21年4月22日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、Y学園がY学園教職員組合(以下「組合」という。)及びその上部団体であるH県私立学校教職員組合連合(以下「私教連」という。)に対して、①平成17年3月10日に組合と締結した確認書(以下「確認書」という。)の内容に反して、主任を任命したこと、②職制に関する期待の導入等を議題とした団体交渉において、不誠実な対応を行ったこと、③「気になる発言集」等の文書送付や組合を批判する発言を行ったこと、④団体交渉の開催条件に組合が応じないことを理由として、団体交渉を拒否したこと、⑤団体交渉を開催しないまま、組合員に夏期一時金を支給したこと、がそれぞれ労組法7条2号、3号の不当労働行為に当たるとして、組合及び私教連が福岡県労委に救済を求めた事件である。
 福岡県労委は、Y学園の行った行為は不当労働行為に該当するとし、Y学園に対し、①団交応諾、②ポスト・ノーティスを命じ、その余の申立てを棄却した(以下「本件命令」という。)ところ、Y学園は、本件命令を不服として、その取消しを求めて福岡地裁に提訴した。同地裁は、請求を棄却した。
判決主文 Y学園の請求を棄却する。
判決要旨 ① 争点1(Y学園が、平成18年6月5日付けの通知(以下「6.5通知」という。)で示した団体交渉条件を組合が受け入れないことを理由に団体交渉を拒否したことが不当労働行為に当たるか。)
  6.5通知は、団体交渉拒否を提案したものというよりは、組合が同通知で示された団交開催条件を受け入れなければ、団体交渉に応じない旨を表明したものというべきである。
  団交の時間は、交渉の内容、進展状況にかかわらず、常に一定の時間で打ち切るとあらかじめ一律に決めておくことは無理があり、合理的な延長を必要とする場合も考えられる。また、団交の交渉人数についても、従前の団交では格別制限されたことはなかったが、平成18年4月の団交のような混乱状況が頻繁に生じていた事実はうかがわれないこと等に照らせば、直ちに交渉人数を常に10名以内と制限することに合理性はない。
  したがって、Y学園が6.5通知で示した団交開催条件に固執し、団交を拒否したことについて、正当は理由は認められない。
② 争点2(団体応諾を命じる本件命令の主文1項及び団交拒否についてポスト・ノーティスを命じる主文2項の救済利益は消滅したか。)
  Y学園は、本件命令後、平成20年7月までの間に11回の団体交渉が行われたこと、今後、Y学園が団体交渉を拒否することはないことから、既に救済利益は消滅した旨を主張する。
  しかし、形式的にはY学園と組合との間で団交が行われているものの、それは組合がY学園の示した団交開催条件に従ったからに過ぎず、組合がこれに応じなければ、Y学園が団交に応じない可能性は高いというべきである。そうだとすると本件命令後においてもY学園が団交開催条件を受け入れないことを理由に、団交拒否をしないようにする必要性は存在しているものといわざるを得ない。したがって、本件命令における救済の利益はいまだ消滅していないと解するのが相当である。
③ 争点3(Y学園が確認書に反して主任を任命したことが、不当労働行為に当たるか。)
  確認書は、職制任命制について定められているところ、同制度は、教職員の身分、処遇等に関するものであり、その定めは労働条件に当たるというべきである。
  そして、同確認書は、有効期間が明記されないまま、それぞれの代表者が記名押印しているのであるから、有効期間の定めのない労働協約として、有効に成立してものといえる。Y会社は、組合との間で職制任命制の再検討のための団交を行うこともなく、一方的に主任を任命しており、かかる態度は労働協約を軽視し、組合との間で団交を行う意義を失わせるものというべきであるから、労組法7条3号の不当労働行為に当たる。
④ 争点4(Y学園が団交において人事計画を提示しないなどの対応をしたことが、不当労働行為に当たるか。)
  組合が、早期退職優遇制度の導入及びそれに伴う整理解雇に関連して将来の人事計画を示すように求められたことは当然の態度であるということができ、Y学園としては、組合の納得が得られるように、これらが必要な合理的根拠を具体的な資料等に基づいて説明する義務があるというべきである。 しかしながら、Y学園は、団交において、特に資料を提示せず、今後3年間のシュミレーションとして、生徒数の推移を説明したに過ぎず、早期退職優遇制度等によって10名の退職者を作出しなければならない理由等について、具体的な資料に基づいて詳細な説明をしないまま、早期退職優遇制度を施行した。かかるY学園の態度は、誠実団交義務に違反するものであり、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。
⑤ 争点5(Y学園が、平成14年の組合との確認書に反し、組合との団交を 経ず、平成18年度夏期一時金を支給したことが不当労働行為に当たるか。)
  14年確認書は8項(五)は、Y学園が妥結前に一時金を一方的に支給することを禁止し、もって、Y学園が、何ら合理的理由がないにもかかわらず、一方的に低額の一時金を支給するという事態が生じることを防止する趣旨であるというべきである。
  そうすると、Y学園が、組合との団交を経ず、一時金を支給したことは、労働協約である確認書に違反するものであり、同確認書が禁止しようとした一方的な低額の一時金支給を可能とするものであって、組合との交渉、妥結を無視ないし軽視するものといわざるを得ず、労組法7条3号の不当労働行為に当たる。
 以上、ポスト・ノーティスを命じる必要性及び相当性も認められるべきであるから、Y学園の請求は理由がなく、これを棄却する。

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡県労委平成18年(不)第10号 一部救済 平成19年11月5日
福岡高裁平成21年(行コ)第23号 棄却 平成21年12月15日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約365KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。