労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 ネスレジャパンホールディング(茨城)
事件番号 東京高裁平成20年(行コ)第435号
控訴人 国(処分行政庁 中央労働委員会)
控訴人補助参加人 ネッスル日本労働組合霞ヶ浦支部
被控訴人 ネスレ日本株式会社
判決年月日 平成21年5月21日
判決区分 全部取消
重要度  
事件概要  会社が、自ら提案する団体交渉方式(以下「連名方式」)でなければ応じられないなどとして、組合が平成13年5月10日、同年6月15日、同14年1月25日、同年2月6日、同年3月14日、同年4月1日及び同年7月18日に申し入れた団体交渉(以下、平成14年以降の団体交渉を「本件5回の団体交渉」という。)を拒否したこと(第1事件)、基本給通知書等に関連会社の名義が使用されていることについて、平成15年1月8日に組合が団体交渉を申し入れて説明を求めたのに会社及び関連会社2社が応じなかったこと(第2事件)が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 初審茨城県労委は、①霞ヶ浦工場において、本件5回の団体交渉及び平成15年1月8日に申し入れた団体交渉に誠実に応じること、②連名方式に固執して霞ヶ浦支部の運営へ支配介入することの禁止、③上記①及び②に係る文書手交を命じ、④平成13年5月10日及び同年6月15日に申し入れた団体交渉については、救済申立て期間を徒過しているとして却下し、⑤その余の救済申立てを棄却したところ、会社及び組合は各々これを不服として再審査を申し立て、中労委は、初審命令主文を変更して救済部分を一部取り消し、その余の再審査申立てを棄却した。
 会社はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、本件命令の効力は消滅しており、本件命令の取消しを求める法律上の利益はないとして、会社の訴えを却下するとの判決を言い渡した。
 中労委は、当該却下を不服として東京高裁に控訴を提起したところ、同高裁は、原判決を取り消し、本件を東京地裁に差し戻すとの判決を言い渡した。
判決主文 1 原判決を取り消す。
2 本件を東京地方裁判所へ差し戻す。
判決要旨 1 労働委員会の救済命令は、不当労働行為によって生じた侵害状態を是正し、不当労働行為がなかったと同様の状態を回復しようとするものであり、紛争当事者の一方である労働組合等に実態上の権利を付与するものではなく、使用者に対して公法上の義務を課することによって、その履行を強制し、侵害状態の回復を図るものである。したがって、侵害状態を是正する余地が全くなくなった場合には、当該救済命令は救済の手段方法としての意味を失い、拘束力を失うことになるというべきである。そして救済命令の拘束力が消滅した場合には、当該救済命令の取消しを求める法律上の利益はなく、その取消しの訴えは不適法なものとして却下されるべきである。
2 本件命令①について、労働組合が使用者と団体交渉を行うのは、当該使用者に雇用されている労働者の代表として行うものであるから、当該使用者に雇用されている労働者(以下「在籍組合員」)を代表しない労働組合が当該使用者に対して団体交渉を求める権利がないことはいうまでもない。しかし、在籍組合員である労働者が退職し、現に雇用される労働者である組合員が一人もいなくなった場合、そのことだけの理由で退職前に申し入れていた団体交渉について、使用者の団体交渉応諾義務が当然に消滅するものと解するのは相当ではない。
 労組法7条2号の「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉することを正当な理由がなくて拒むこと」における雇用の要件は、団体交渉申入れ時点において具備すれば足りると解することは、文理的にも十分可能であり合理的である。また、労働組合ないしその組合員が民事訴訟を提起して救済の道を確保する方途があることを理由に労組法による団体交渉等を保障して正常な集団的労働関係秩序を回復、確保すべく組合活動への侵害状況を除去、是正する必要がないと解することも、実質的にみて相当でない。
 団体交渉は、労働者の労働条件について使用者と労働者とを実質的に対等の立場に置こうとすることを目的とするから、労働者の労働条件を離れて労働組合の団体交渉は観念できないが、組合員の労働条件に関する限り、当該組合員が退職したとしても、労使間において団体交渉事項として相当であり、未解決問題がある場合には、労組法の団体交渉として全く意味がないということはできない。支部は、再び霞ヶ浦工場に組合員を獲得する可能性がないとはいえないのであるから、これを前提に団体交渉事項として相当かどうか、また未解決といえるかどうかについて検討すべきである。
 以上から、原判決が本件命令①はその基礎を失い、その拘束力を失ったとした判断は失当であり、なお、救済命令が拘束力を失う前に、その履行の有無を要する特段の事情が存するか否かについて審理をすべきである。
3 本件命令②は、会社のこれまでの団体交渉応諾義務の不履行の様態に照らして、将来における団体交渉について、支部からの申込みがあった場合に、連名方式でないことを理由に拒否してはならず、誠実に応じることを命ずるものである。たしかに支部には在籍組合員が存在しないことになったが、支部は、今後、在籍組合員を獲得する可能性もあるから、およそ、労働組合が消滅したような場合とは異なり、救済命令としての意義を完全に喪失したと判断することはできず、その拘束力は消滅していないというべきである。
4 本件命令③は、会社に文書手交を命ずるものであるが、支部は、今後、在籍組合員を獲得する可能性もあるから、将来の団体交渉について、不当な団体交渉拒否を防止する観点からみても、文書手交を命ずることによる再発を防止する意義は失われておらず、本件命令③の拘束力が消滅したとする原判決の判断は不当である。
5 以上のとおり、本件救済命令を取り消す法律上の利益が消滅したとして、本件訴えを却下した原判決は不当であるから、これを取り消して差し戻すこととする。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
茨城県労委平成15年(不)第1号
茨城県労委 平成14年(不)第5号
一部救済 平成17年1月20日
中労委平成17年(不再)第8・12号 一部変更 平成19年8月1日
東京地裁平成19年(行ウ)第601号 却下 平成20年11月19日
最高裁平成21年(行ヒ)第301号 上告不受理 平成22年10月19日
 
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