労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 南労会(賃金・一時金等)(平成9年度賃上げ等)
事件番号 東京高裁平成20年(行コ)第240号
控訴人兼被控訴人(一審原告) 医療法人南労会
被控訴人兼控訴人(一審被告) 国(裁決行政庁 中央労働委員会)
一審被告補助参加人 全国金属機械労働組合港合同
全国金属機械労働組合港合同南労会支部
判決年月日 平成21年5月28日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、医療法人南労会(「南労会」)が、①平成3年度、平成4年度、平成7年度及び平成8年度の各賃上げを実施しなかったこと並びに平成4年から平成8年までの夏季一時金及び年末一時金を支給しなかったこと等(賃金・一時金事件。「第1事件」)、②平成9年度の賃上げを実施しなかったこと並びに平成9年夏季一時金及び年末一時金を支給しなかったこと等(平成9年度賃上げ等事件。「第2事件」)が、いずれも不当労働行為であるとして、全国金属機械労働組合港合同(「組合」)及び組合南労会支部(「支部」、組合と併せて「組合ら」)が大阪府労委に救済申立てをした事件である。
 初審大阪府労委及び中労委は、上記第1事件及び第2事件について、それぞれ、次のとおり命令を発した。
1 第1事件
  初審大阪府労委は、平成11年12月27日付けで、南労会に対し、①平成7度から平成8年度までの賃上げについて誠実に団体交渉を行うこと、②平成4年から平成8年の間の各一時金について遅刻早退控除等の実施を条件とすることなく妥結し支払うこと等を命ずる一部救済命令を発したところ、南労会及び組合らはこれを不服として再審査を申し立て、中労委は、平成18年3月15日付けで、初審大阪府労委の判断を維持した上で救済命令の一部を変更する命令(「本件第1命令」)を発した。
2 第2事件
  初審大阪府労委は、平成12年7月17日付けで、南労会に対し、①平成9年度の賃上げについて誠実に団体交渉を行うこと、②平成9年の夏季一時金及び年末一時金ついて遅刻早退控除等の実施を条件とすることなく妥結し支払うこと等を命ずる一部救済命令を発したところ、南労会及び組合らはこれを不服として再審査を申し立て、中労委は、平成18年7月5日付けで、初審大阪府労委の判断を維持した上で救済命令の一部を変更する命令(「本件第2命令」。本件第1命令と併せて、「本件各命令」)を発した。
3 南労会は、本件各命令を不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、これら訴えを併合して審理し、本件各命令のうち、平成7年度から平成9年度の賃上げについて誠実に団体交渉を行い、妥結の内容に従って本件各一時金に係る差額を清算すること等を命じた部分を取り消し、その余の請求は棄却した。
 南労会及び中労委は、これを不服として東京高裁に控訴したが、同裁判所は、双方の控訴を棄却した。
判決主文 南労会及び中労委の本件各控訴をいずれも棄却する。
判決要旨 1 当裁判所も以下のとおり判断する。
  当裁判所の判断の理由は、次項以下において当審における南労会、中労委、組合らの主な主張につき判断を付加するほか、原判決の記載のとおりであるから、これを引用する。
① 3年変更及び7年変更における南労会の対応については、いずれも労働組合法7条2号及び3号に該当する不当労働行為であるということはできない。
② 南労会が、平成4年ないし平成9年の各一時金に関する団体交渉等において、自ら提案した遅刻早退控除、ワッペン控除、処分等控除という妥結の条件に固執し、当該条件を受け入れなかった組合らと妥結に至らないものとして各一時金を支給していないことは、労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるというのが相当である。
③ 平成7年ないし平成9年の各賃上げに関する団体交渉等において、南労会の新賃金体系の導入のための協議態様に誠実交渉義務違反はなく、平成8年及び9年の賃上げに関する団体交渉において、南労会が妥結月実施を賃上げ妥結の条件としたことは、組合らへの支配介入であるとはいえず、組合らがこの妥結条件を受け入れなかった結果、賃上げ分の支払が遅れたとしても、これを組合らの組合員であることを理由に不利益に取り扱ったものということもできない。
 したがって、結局、南労会の本訴請求は、本件第1命令主文第Ⅰ項の3ないし6号及び本件第2命令主文第Ⅰ項の3ないし5の取消しを求める限度で認容すべきであり、その余の部分は棄却すべきであると判断する。
2 当審における南労会の主な主張に対する判断
① 南労会は、3年変更実施に際し、松浦診療所の各部署の主任に対して、職員ごとの勤務割を行うように業務指示を行っているが、この指示は実行されず、結果的には、3年変更に基づく組合員個々人の具体的な勤務時間の指示は行われなかったのである。また、支部が各人ごとの遅刻早退回数を明らかにするように要求したのに対し、毎月の賃金明細票に記載されているとして各人の回数を示さず、しかも、各人の毎月の賃金明細票に記載されていた遅刻早退回数は、正確なものではなく、南労会自身、不正確であったことを認めているのであるから、7年変更時に業務指示書をもって具体的勤務を通知しているにしても、「不明確な根拠による遅刻早退控除の受入れを妥結条件として一時金の支給を拒み続け」たとの原判決は相当であり、南労会の主張は認められない。
② 3年変更及び7年変更が正当であるとしても、これに反したとして遅刻早退控除を行うためには、変更後の個々人の具体的時間割が示され、また、遅刻早退の事実(遅刻早退の日時・時間)が明確にされなければならないところ、前記のとおり、南労会は「不明確な根拠による遅刻早退控除の受入れを妥結条件として一時金の支給を拒み続け」たのであって、原判決の判断は相当であり、南労会の主張は認められない。
③ 南労会の主張していた遅刻早退控除が不正確な根拠に基づくものであることは、前記のとおりであるから、遅刻早退による処分を控除理由とする処分等控除を一時金の妥結条件とすることは、遅刻早退控除を一時金の妥結条件とする場合と同様の問題を含むものであり、遅刻早退控除の場合と同様の判断をした原判決は相当であり、南労会の主張は認められない。
④ 団体交渉における南労会の対応に照らすと、松浦診療所事務長以下の全管理職が、支部組合員らのワッペン着用の事実を確認していたとは認められず、南労会は、支部組合員が一律にワッペンを着用していることを前提として減額査定し、支部の組合員の申出によって調整するという方法をとっていたものと認められるから、原判決の判断は相当であり、南労会の主張は認められない。
3 当審における中労委の主な主張に対する判断
① 使用者が経営上の必要に基づき組合に対してした提案について、誠実交渉義務を尽くしたか否かを判断するに当たっては、当該経営上の必要性の有無程度及び組合の了解を得るために尽くすべき措置を講じているか否かの双方を検討して判断する必要があることは当然であって、中労委の主張は採用しがたい。
② 南労会は、三年変更前の協議等において、労働組合である支部との第二次再建案についての合意達成の可能性を模索しており、誠実交渉義務を尽くしていないということはできないとした原判決の判断は相当であり、誠実義務を尽くしていないとの中労委の主張は認められない。
③ 原判決の認定している組合らの姿勢に照らすと、組合らに南労会との合意を模索する姿勢がなかったということはできないとの中労委の主張は認めることはできず、また、組合らの姿勢をも考慮すると、南労会のした説明の程度・資料の提供が不十分であるとの中労委の主張も認めることはできない。
  よって、7年変更について南労会は誠実交渉義務を尽くしていないとの中労委の主張は採用できない。
④ 中労委は、考課基準等を示さないなど新賃金体系の具体的内容・運用方法等について十分な説明をしていないとするが、2年程度をかけて、職務調査を行い、職能要件書を作成し、考課者の訓練も行った上で新賃金体系を実施することを計画しているのであって、職務調査を行われず、職能要件書も作成されていない当初の段階から、考課基準等の具体的内容の説明を求めることは難きを強いるものあって、これが示されていないから説明が不十分であるとの中労委の主張は採用しがたいものである。
  また、新賃金体系に関する団体交渉がなされていた当時における支部の対応・行動からすると、当時、組合らに南労会との合意を模索するような姿勢はなかったといわざるを得ないとする原判決の判断は相当であって、組合らに南労会との合意を模索するような姿勢はなかったということはできないとの中労委の主張は認められない。
  よって、新賃金体系導入のための協議において南労会が誠実交渉義務を尽くしていないとの中労委の主張は採用できない。
⑤ 新賃金体系導入のための協議において南労会が誠実交渉義務を尽くしており、不当労働行為と認められないことは前記のとおりであるから、妥結月実施を、組合らとの妥結促進のための交渉材料として提案することも不合理とまではいえないとする原判決の判断は相当であって、これを不当労働行為であるとする中労委の主張は採用できない。
4 当審における組合らの主な主張に対する判断
① 新賃金体系導入のための協議において南労会が誠実交渉義務を尽くしていないとはいえないことは前記のとおりであるから、新賃金体系の最も重要な根幹である人事考課制度の具体的運用基準について、関係資料の提示を拒否するなど、南労会の説明は極めて不十分なものであったとする組合らの主張は採用できない。
② 組合の同意のない状態で、新賃金体系への移行を円滑に実施することは困難と考えられることを考慮すると、新賃金体系の導入への同意を賃上げの妥結条件として提案することは不合理とはいえないから、新賃金体系への同意を賃上げ妥結の条件としたことは明白な不当労働行為であるとする組合らの主張は認められない。
③ 妥結月実施を賃上げ妥結の条件として提案することが不合理とまではいえず、不当労働行為となるものではないことは前記のとおりであるから、組合らが到底受諾しがたい不利益な条項を提示することにより、未妥結状態を継続して賃金を支払わないことを目的としていたものであって、これを不合理とはいえないとした原判決の判断は誤っているとする組合らの主張は採用できない。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
大阪府労委 平成4年(不)第30号、平成4年(不)第33号、平成5年(不)第2号、平成6年(不)第19号、平成7年(不)第27号、平成7年(不)第28号、平成7年(不)第53号、平成8年(不)第28号、平成9年(不)第16号及び平成9年(不)第17号 棄却(4-30)、一部救済(7-53、9-16)、全部救済(その他) 平成11年12月27日
大阪府労委平成10年(不)第27号 一部救済 平成12年7月17日
中労委平成12年(不再)第3号及び平成12年(不再)第4号 一部変更 平成18年3月15日
中労委平成12年(不再)第45号・第47号 一部変更 平成18年7月5日
東京地裁平成18年(行ウ)第238号 平成18年(行ウ)第462号 一部取消 平成20年4月23日
東京地裁平成18年(行ク)第330号、第364号 緊急命令申立ての一部認容 平成20年4月23日
最高裁平成21年(行ツ)第267号
最高裁平成21年(行ヒ)第341号
上告棄却・不受理決定 平成22年2月4日
最高裁平成21年(行ヒ)第342号 不受理決定 平成22年2月4日
 
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