労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 筑邦トラック
事件番号 福岡地裁平成20年(行ウ)第41号
原告 株式会社筑邦トラック
被告 福岡県、福岡県労働委員会(代表者兼処分行政庁)
被告訴訟参加人 全国一般労働組合福岡地方本部
判決年月日 平成21年11月4日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、Y会社が、組合活動として行った未払賃金支払請求訴訟を取り下げるよう圧力を加え、組合分会長X1を雇止めにしたことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 福岡県労委は、会社に対し、X1を1年間再雇用したものとして扱い、原職復帰及び原職に復帰するまでの間賃金相当額を支払い、文書交付を命じたところ、Y会社は、本件命令を不服として、その取消しを求めて福岡地裁に提訴した。
判決主文 Y会社の請求を棄却する。(福岡県労委命令を支持)
判決の要旨 1 争点(1)(本件雇止めが労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるか否か)について
X1らが提起した未払賃金支払請求訴訟は、分会の方針に基づく正当な組合活動として行われたものであり、Y会社も、そのことを十分認識していたものというべきである。そして、X1に対し、当該訴訟の取下げを再雇用契約更新の条件とする旨告げた。さらに、Y会社は、X1に対して本件雇止めを通告した際、本件雇止めの理由である総合的判断の中に当該訴訟を取り下げなかったことが含まれると答えたものの、その他の理由は明らかにしなかった。これらの事実を総合考慮すると、Y会社は、X1が組合活動として当該訴訟を提起したことを嫌悪し、X1に対して当該訴訟の取下げを要求したにもかかわらず、X1がこれに応じようとしなかったため、本件再雇用契約を更新しないこととし、X1に対して本件雇止めを行ったものであると推認するのが相当である。
これに対し、Y会社は、本件雇止めの理由について、Y会社の経営状態が悪化しており、人員整理の必要性があったところ、X1の勤務態度が悪かったことから本件雇止めを行ったと主張する。しかし、Y会社が主張する理由は、いずれも本件雇止めを行う理由として合理的とは認め難い。
また、X1は、本件雇止め当時、分会長であったことからすれば、本件雇止めは、分会長であるX1をY会社の社外へ排除することによって、分会員の組合活動を萎縮させ、分会の組織を弱体化させる行為であると評価すべきである。
したがって、Y会社のX1に対する本件雇止めは、労組法7条1号及び同条3号に該当するものといわなければならず、これと同旨の本件命令が違法であるということはできない。
2 争点(2)(本件命令の救済方法が裁量権を逸脱したものであるか否か)について
裁判所は、労働委員会の裁量権を基本的には尊重すべきではあるが、その行使が認められる範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるときには、当該救済命令は違法というべきである。この点、Y会社は、有期雇用契約である本件再雇用契約は、解雇権濫用法理が類推適用されず、契約期間の満了によって当然に終了するのであるから、X1の原職復帰を内容とする本件命令は、契約自由の原則に反するものであり、その裁量権行使の範囲を逸脱した違法があると主張するところである。
しかし、①期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態で存在しているか、あるいは、②労働者が期間満了後の雇用の継続を期待することに合理性が認められるような場合には、解雇権濫用の法理が類推適用されると解するのが相当である。これを本件についてみるに、Y会社は、X1との間で契約期間を1年間とする本件再雇用契約を締結した後、1回目の更新時において本件雇止めを行ったものであることからすれば、実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態にあったということはできない。しかしながら、Y会社は、どのような場合であれば更新されないのかを具体的に明らかにしていなかった。また、Y会社においては、本件再雇用契約締結前と締結後とで、賃金額は違うものの、業務内容その他については全く同一であったものである。さらに、定年退職後に引き続き雇用された従業員で、Y会社から更新を拒否された者がいた事実がうかがわれない。そして、Y会社は、X1に対し、当該訴訟の取下げを条件として本件再雇用契約を延長することを示唆しており、当該訴訟の提起以外に本件雇止めを行う必要性や合理的な理由が認め難いというのである。これらの事実を総合考慮すると、X1の本件再雇用契約の更新に対する期待には合理的な理由があり、解雇に関する法理を類推適用されると解するのが相当である。
そして、本件雇止めの理由が客観的かつ合理的なものであり、社会通念上これを相当として是認することができるか否かについて検討する。Y会社が本件雇止めの理由として主張する経営状態悪化による人員削減の必要性は、客観的かつ合理的なものとはいえず、社会通念上これを相当として是認することはできない。また、Y会社が本件雇止めの理由として主張するX1の勤務態度についても客観的かつ合理的なものとはいえず、社会通念上これを相当として是認することができない。したがって、Y会社とX1との間の本件雇止め後の私法上の法律関係は、基本的に本件再雇用契約が更新されたのと同様の法律関係になるものと解するのが相当であり、本件命令の救済内容は、少なくとも私法上の法律関係から著しくかけ離れているとか、契約自由の原則に反するということはできず、その裁量権行使の範囲を超えたものとは認められない。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡県労委平成19年(不)第5号 全部救済 平成20年8月22日
 
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