労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  論創社 
事件番号  東京地裁平成21年(行ウ)第351号 
原告  東京・中部地域労働組合 
被告  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被告補助参加人  有限会社論創社 
判決年月日  平成22年10月27日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 Y会社が、①平成17年3月31日をもって組合員X1の雇用を打ち切ったこと、②X組合の申し入れたX1の雇用問題等に関する団体交渉に誠実に応じず、その後同問題に係る団体交渉を拒否したこと、③組合員を脱退させたり、インターネットの掲示板にX組合を誹謗・中傷する書き込みを行う等、X組合の活動に介入したことが、不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、Y会社に対し、①X1の新たな雇用条件について合意するまで、従前と同様の雇用条件が継続していたものとして取り扱うこと、②同人の雇用問題等に関する団体交渉に誠実に応じること、③これらに関する文書手交を命じ、その余の救済申立ては棄却した。
 Y会社は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を取り消した。
 本件は、これを不服として、X組合が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、X組合の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決の要旨  1 争点(1):本件雇用の打切りにおける不当労働行為の成否
(1) 本件雇用契約の期間の定め及び平成17年4月以降X1を正社員とするという合意の有無
 ア ①本件雇用契約は、給与の額が低額で、勤務日数も週4日と合意されるなど、X1が助手であることを前提として締結され、大学の用務を優先してよいという、他の従業員にはない優遇措置を受けており、Y会社とX1は、同人が助手であることを不可欠の考慮要素として、本件雇用契約の諸条件を定めたものということができる。また、②X1は、本件雇用契約の締結に当たって、助手の任期満了後は正社員になることを希望していたが、その際、将来の勤務条件の交渉等が行われた形跡はうかがわれない。
 このような事実によれば、本件雇用契約は、期間をX1の助手の任期満了までとする有期契約であるというべきであり、また、平成17年4月以降、X1を正社員とするという合意を認めることはできない。
 イ 本件団体交渉においても、X組合の組合員は、そもそも期間を定めた事実はないという異議を述べていないし、X1も、このような異議を述べておらず、当初から平成17年4月以降にX1を正社員とするという合意が成立したとは述べていない。
 これらの事実によれば、X組合は、本件雇用契約は期間の定めがないとか、平成17年4月以降正社員にするということを主張していたのではなく、本件雇用契約が平成17年3月31日に期間満了により打ち切られることを前提として、そうだとしても、X1の働きぶり等を考慮すると、本件雇用の打切りは合理性がないという理由で、雇用を継続して、そこで勤務条件の見直しを図ることを求めていたものと解するのが相当である。
  ウ ①X1の資格、経歴及び研究活動状況等によれば、X1は、もし助手の任期中に専門分野に合った研究職が見付かれば、これを選択するのが当然というべきである。また、②Y会社においては、労働条件が整っているとは言いがたい状況であったことなどによれば、研究職でなくても勤務条件の良い他の出版社等の転職先が見付かれば、そちらを選択したと考えるのが自然である。
 ③X1の助手の任期満了は、本件雇用契約締結時から1年9か月も先のことであり、同契約締結の時点では、任期満了後のX1の去就は不確実であった。それにも関わらず、助手の任期満了後も引き続きX1を雇用することに同意していたというのは合理性を欠き、相当でない。
 ④X組合が、期間の定めをした事実はないという異議を述べていないことなどの本件団体交渉の経緯に照らしても、本件雇用契約の内容が、平成17年4月以降もX1を引き続き雇用するものであったというのは不自然というべきである。
 エ ①Y会社の代表取締役Y1が、X1に対し、長く働きたかったら全工程を1人で担当することを覚えるようにという趣旨の発言をしたこと、②X1の勤務実態は他の正社員とほぼ同様のものというべきであること、③平成16年の段階ではX1の担当していた業務のうち平成17年4月以降に作業を要すると思われるものも予定されていたこと、④本件団体交渉において、Y1が、大学助手の任期満了後においてもX1がY会社において勤務を継続する可能性もあったという趣旨の発言をしたことは、上記ウの判断を覆すものではなく、また、Y会社において、平成17年4月以降X1を正社員とすることが将来的な可能性のひとつであったことと矛盾するものともいえない。
(2) Y1は平成16年12月28日の面談でX1に対し本件雇用の打切りを通告したか
 ア X組合が、本件団体交渉の冒頭において、「X1の意思に反してここで契約を解除するということをやめて」と申し入れていることによれば、X組合は、Y会社がX1に対し、本件団体交渉よりも前に本件雇用の打切りを通告したことを受けて、本件団体交渉を申し入れたものということができる。
 イ 団体交渉の経過によれば、Y1は、12月28日の面談でX1に対し本件雇用の打切りを通告したと認めることができる。Y1が「1月末にもう一回話し合う」予定を立てたのは、X1が正社員となることを強く希望したため、その諾否についてあらためて交渉等に応じることにしたものと考えられる。
(3) 本件雇用の打切りはX1がX組合に所属していたことを理由とするものか
 ア 本件雇用の打切りの理由は、①本件雇用契約は期間をX1の助手の任期満了までとする有期契約であること、②大学院卒のX1を雇用したら相応の賃金を支払う必要があるが、経費削減策等を取っていたY会社はその余力がなかったこと、③Y1は、X1の就職先には、キャリアに見合った研究職や学術書を扱う他の出版社等の方がふさわしいと考えたことであると認められる。
 イ 12月28日の面談で、Y1が労働組合を嫌悪する発言をしたとすることについては、X1の供述以外の裏付けがなく、これを認めるに足りない。また、Y1が、12月28日の面談において、X1の言動を批判する発言をしたことがうかがわれるが、X1の組合加入を知った1月5日よりも前の発言であることからすれば、X1の組合加入や組合活動を嫌悪するものではないということができる。
 そして、Y1が12月28日の面談において本件雇用の打切りを告知し、X1の雇用継続に対して経営不振等の理由を述べて消極的な回答をしたのであるから、Y1が本件雇用契約の期間について主張したのが(X組合が主張するところの)第2回団体交渉(平成17年2月3日)以降であるとは認められない。
(4) まとめ
 以上によれば、Y会社が本件雇用の打切りをしたことは、X1がX組合に所属していることを理由とするものであり、組合員に対する不利益取扱い(労組法7条1号)及び支配介入(同条3号)の不当労働行為に該当すると認めることはできない。
2 争点(2):本件団体交渉等における不当労働行為の成否
(1) 団体交渉において、労使双方が当該議題についてそれぞれ自己の主張、提案、説明を出し尽くし、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至った場合には、使用者は交渉を打ち切ることもやむを得ないものというべきである。
(2) X1の雇用問題について、本件団体交渉において、5回にわたり、合計約7時間をかけて議論が交わされたが、話合いは平行線のままであり、このような本件団体交渉の経過によれば、X組合とY会社は、互いにみずからの主張を繰り返して譲らず、話合いが平行線のまま膠着したものということができる。そうすると、一方当事者であるY会社の対応だけを、ただちに不誠実であると認めることはできない。
 また、第5回団体交渉の後はY会社がX組合の団体交渉の申入れに応じていないが、X組合とY会社との間で話合いが平行線のまま膠着していたのであるから、そのような場合に、弁護士などの法律専門家に依頼して労働委員会などの第三者機関における紛争解決を求めようとすることも、使用者の判断としては相応の合理性を有するものであるといえ、これを団体交渉不応諾とまでいうことはできない。
(3) 以上によれば、Y会社の本件団体交渉等における対応は、労組法7条2号の不当労働行為に該当すると認めることはできない。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成17年(不)第33号・第72号 一部救済 平成19年7月3日
中労委平成19年(不再)第44号 一部変更 平成21年1月21日
東京高裁平成22年(行コ)第385号 棄却 平成23年5月25日
最高裁平成23年(行ツ)第292号・平成23年(行ヒ)第327号 上告棄却・上告不受理 平成24年2月7日
 
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