労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る] [顛末情報]
概要情報
事件名  南労会(10年度及び11年度賃上げ等) 
事件番号  東京高裁平成22年(行コ)第23号 
控訴人  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
控訴人補助参加人  全国金属機械労働組合港合同
全国金属機械労働組合港合同南労会支部 
被控訴人  医療法人南労会 
判決年月日  平成23年9月30日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 医療法人が、(1)平成10年度及び11年度賃上げについて、①誠実な団体交渉を行わなかったこと、②組合が新賃金体系に同意しなかったとして支部組合員にのみ定昇を実施しなかったこと、(2)平成10年度夏季及び年末並びに11年度夏季の各一時金について、①未実施の賃上げを実施しないまま算定したこと、②支部組合員に対し遅刻早退控除をしたこと、(3)支部組合員X1及びX2に対して処分等を理由に平成10年度夏季一時金を減額したこと、(4)①平成11年8月、誠実な団交を行うことなく、新賃金体系の支部組合員への適用を強行したこと、②過去の未実施賃上げ分を実施しないまま新賃金体系への移行を強行し、支部組合員をそれ以外の南労会の従業員に比べて不利益に扱ったことが、それぞれ不当労働行為に当たるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、(1)平成10年度及び11年度分賃金について、誠実に協議した上で、それぞれ4月から定期昇給相当分の賃上げを実施すること、(2)①新賃金体系の移行について誠実に協議すること、②新賃金体系への移行に当たっては過去の未実施の賃上げ相当額を精算する等、支部組合員がそれ以外の病院職員と比較し不利にならないよう誠実に協議し決定すること、(3)①遅刻早退を理由とした平成10年度夏季及び年末並びに11年度夏季の各一時金の減額について、変更前の勤務時間に基づいて遅刻早退回数を計算して各一時金の減額分を算定し直し、既払額との差額を支払うこと、②10年度及び11年度賃上げが妥結に至ったときは、賃上げによって生じる10年度夏季及び年末並びに11年度夏季の各一時金に係る差額を精算すること、(4)上記に関する文書の手交、を命じ、その余の申立てを棄却した。
 医療法人及び組合双方はこれを不服として、それぞれ再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を一部変更し、(1)平成11年8月に実施した新賃金体系について、組合との間で新賃金体系の具体的運用基準等に関して誠実に団体交渉を行うこと、(2)平成10年度及び11年度分賃金について、それぞれ4月から定期昇給相当分の賃上げを実施すること、(3)未実施の賃上げ相当額を精算するものとし、精算方法について、支部組合員に不利とならないよう組合との間で誠実に協議し決定すること、(4)遅刻早退を理由とした平成10年度夏季及び年末並びに11年度夏季の各一時金の減額について、変更前の勤務時間に基づいて遅刻早退回数を計算して各一時金の減額分を算定し直し、既払額との差額を支払うこと、(5)賃上げ相当額を基準にして、平成10年度夏季及び年末並びに11年度夏季の各一時金の支払額を算定し、既払額との差額を精算すること、(6)上記に関する文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
 これに対し、医療法人は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は中労委の救済命令を全部取り消した。
 本件は、同地裁判決を不服として、中労委が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、補助参加によって生じた部分は控訴人補助参加人らの負担とし、その余は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、中労委が平成19年12月5日付けでした本件命令の主文第Ⅰ項の1から6までの不当労働行為を認める旨の判断は違法であると判断する。
 その理由は、後記2のとおり、控訴人及び補助参加人らの当審における主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1から5までの理由説示と同一であるからこれを引用する。
2 控訴人及び補助参加人らの当審における主張に対する判断
(1) 平成3年勤務時間等変更及び平成7年勤務時間等変更の不当労働行為該当性
 ア 平成3年勤務時間等変更(以下「3年変更」という。)については、①平成3年当時、経営状態が悪化していたY1診療所の経営を改善する必要性に迫られ、第2次再建案が立案されたこと、②医療法人は、組合支部に対し、3か月以上にわたり20回を超える再建案協議及び事務折衝を行うなど再建案につき説明したこと、③実施後の具体的な勤務パターンを示し、支部の要求に対しても、夜間診療、夜の食事支給、休憩時間の延長、Y2病院での労使関係の改善等の回答を示すなどした後、3年変更を実施するに至ったことが認められる。
 上記再建案は、Y1診療所の当時の経営常態を改善するためのもので、医療法人の経営判断として不合理とすべき格別の事情はうかがわれないから、医療法人が、支部からの事前合意を得られないまま3年変更を実施したことが、事前協議合意協定を無視し、支部の自主的運営を阻害したということはできない。
 イ 平成7年勤務時間等変更(以下「7年変更」という。)についても、①平成7年当時、Y1診療所とY2病院との勤務体制や賃金体系が異なり、人事異動等を円滑に実施するためにも不統一を是正する必要があったこと、②7年変更に係る新就業規則の定める勤務体制は、週休2日制、生理休暇(有給)の変更及び変形労働時間制で、Y2病院で実施されていたが、Y2病院で格別の問題は生じていなかったこと、③医療法人は、組合らに新就業規則案を示し、5回にわたり団体交渉を重ね、周知期間を予告し、各組合員ごとの具体的な勤務時間を示したこと、④これに対し、支部は、3年変更に従うことなく、組合ダイヤに従った勤務をするよう指示し、賃上げ問題等をめぐって医療法人と対立していたこと、また、⑤このような時期に、組合員らは、医療法人の理事や事務長の自宅付近でビラ配布等を行ったため、妨害禁止仮処分命令を発せられたことが認められ、医療法人は、7年変更前の協議において、新就業規則の制定に関し労使の合意に向けた具体的な提案等を行っていたのに対し、組合らは、新就業規則に反対を表明したものの、医療法人との合意を模索するような姿勢を持つことなく、かえってこれを阻害するような行動に及んでいたことが認められる。
 すると、医療法人は、7年変更前の協議等において、新就業規則についての合意達成の可能性を模索していたということができ、医療法人が、支部からの事前合意を得られないまま7年変更を実施したことが、事前協議合意協定に違反し、支部の自主的運営を阻害したということはできない。
 ウ 3年変更及び7年変更の実施は、医療法人の経営上行わなければならない喫緊の施策であったものと認められ、事前協議合意協定もこのような場合にまで支部の了解を得られない限り実施できないとする趣旨と解することはできず、医療法人は、支部の了解を得るために団体交渉を重ね、その対応が誠実交渉義務に違反するようなものであったとも認め難いから、医療法人が事前協議合意協定を無視して、支部の自主的運営を阻害したと認めることはできない。
 したがって、3年変更及び7年変更につき、医療法人の対応が労組法7条2号及び3号の不当労働行為に当たるということはできない。
(2) 新賃金体系移行に関する医療法人の対応の不当労働行為該当性
 医療法人は、組合らに対し、新賃金体系に移行する必要性について説明し、新賃金体系の給与規程等の資料を提示し、支部組合員につき、新賃金体系を適用した場合の本人給、職能給の等級、金額等を記載した賃金表を提出し、人事考課制度の具体的な内容、実質的な導入スケジュールも説明して、新賃金体系への理解を求めていたのに対し、組合らは、新賃金体系及び職能給の導入に反対し、一切妥協しようとせず、医療法人の理事や事務長の自宅付近で違法なビラ配布等に及んで面談強要禁止等仮処分決定を受けていた。
 これらの事情によれば、組合らの一連行動には誠実に交渉する姿勢が欠如していたものと認められるのに対し、医療法人は、新賃金体系の導入について、団体交渉等において、相応の資料を提供しつつ、具体的な内容等を説明して合意達成の可能性を模索していたと認められるから、医療法人が、誠実交渉義務を尽くしていないということはできない。
(3) 本件各賃上げにおける定期昇給の未実施の不当労働行為該当性
 新賃金体系は、職能給を内容とし、当時、我が国では、仕事の内容や成果を重視した賃金額決定のシステムが必要であることが共通認識となっており、職能給は、長期雇用のシステムと能力主義を調和させるべく導入が図られていた制度で、これを内容とする新賃金体系に不合理とすべき事情はうかがわれない。
 そして、前記認定の新賃金体系の導入に係る事情及び交渉経緯等からすると、支部組合員は、平成3年8月以降、Y1診療所が具体的に指示した勤務時間に従うことなく、支部の指示に従って組合ダイヤによる勤務を継続していたのであり、医療法人が、支部組合員の勤務状況につき、正常な勤務に当たらないと考え、医療法人の指示した勤務時間に従った正常勤務を前提にした昇給や業務の習熟を前提とした習熟昇給を認めることができないとして、支部組合員に定期昇給を認めないとしたことをもって不当な取扱いということはできない。また、新賃金体系の導入に関する団体交渉における医療法人の対応が誠実交渉義務に違反するものであったということもできない。
 以上のとおり、医療法人が提示した新賃金体系移行への同意という本件各賃上げの条件は、その条件が提示された事情や交渉経緯からみて不合理ということはできないから、本件各賃上げに関し、組合らが新賃金体系移行に同意しなかったとして、定期昇給を実施しなかったことが、新賃金体系導入に反対してきた組合らを嫌悪し、その組合員を経済的に不利益に取り扱ったということはできず、また、組合らの運営に支配介入しその弱体化を企図したものとも認めることはできない。
(4) 未実施賃上げ分の精算に応じていないことの不当労働行為該当性
 上記(3)で検討したとおり、新賃金体系の内容は合理性を有し、新賃金体系の導入に関する団体交渉の際の医療法人の対応が誠実交渉義務違反に当たるような事情も認め難く、支部組合員は、医療法人が指示した勤務時間に従うことなく、組合ダイヤによる勤務を継続していたのであって、医療法人がこれを正常な勤務に当たらないとして昇給を認めなかったことをもって不当な取扱いということはできないから、新賃金体系の導入に関する団体交渉における医療法人の対応が誠実交渉義務に違反するものであったということはできない。
 したがって、新賃金体系へ移行するに当たって、医療法人が未実施賃上げ分の精算に応じなかったことが、新賃金体系導入に反対していた組合らを嫌悪し、その組合員を経済的に不利な状況に留めようとしたということはできず、また、組合らの運営に支配介入しその弱体化を企図したと認めることもできない。
(5) 遅刻早退控除による本件各一時金減額の不当労働行為該当性
 控除の対象となった遅刻早退は、主に支部組合員が組合ダイヤに従って勤務したことにより生じたものと認められ、支部組合員らが、組合らから指示された組合ダイヤに基づく勤務を行っていたのは、債務の本旨に従った労務の提供ということはできず、他にこれを正当化し得るような事情も認め難い。
 また、本件各一時金の算定期間において、医療法人は、組合員に対し、書面をもって勤務指示を行い、各日の始業時間・休憩時間等について業務指示書を交付していたこと、医療法人は、毎月、組合員が勤務したと主張する組合様式の勤務表に記載された勤務時間と医療法人が勤務を指示した時間とを比較して、組合員の勤務時間、残業時間及び遅刻早退回数を算出し、各給与計算を行った上、各給与明細において遅刻早退回数を明示していたことが認められる。
 組合員が組合ダイヤに従った就労をしていたのは違法な行為といわざるを得ず、組合員は遅刻早退回数等を把握できたのであるから、医療法人が本件各一時金の支給に当たって遅刻早退控除をしたことをもって不当な措置ということはできない。
 また、それが支部組合員らに経済的打撃を与え、また、組合らの運営に支配介入してその弱体化を図ったということもできない。
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成11年(不)第46号・第105号、平成12年(不)第30号 一部救済 平成14年3月29日
中労委平成14年(不再)第15号・第19号 一部変更 平成19年12月5日
東京地裁平成20年(行ウ)第30号 全部取消 平成21年12月14日
東京地裁平成20年(行ク)第244号 緊急命令申立ての却下 平成21年12月14日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約192KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。