労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  大阪府(執行停止申立) 
事件番号  大阪地裁平成26年(行ク)第2号  
申立人  大阪府 
相手方  大阪府(処分行政庁・大阪府労働委員会)  
決定年月日  平成26年3月25日 
決定区分  却下 
重要度   
事件概要  1 組合(いわゆる混合組合)は、府が、組合員の労働条件に関する団体交渉申入れに対し、交渉参加者名簿を事前に提出しないことを理由に拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済を申し立てた。
2 大阪府労委は、組合の救済申立てのうち、地公法適用者については申立人適格を否定して却下するとともに、その他の労組法適用者については正当な理由のない団交拒否として労組法7条2項に当たると判断し、文書手交を命じる救済命令を発した(本件救済命令)。
3 大阪府は、大阪府労委命令を不服として、本件救済命令主文第2項の取消しを求める訴訟(本案事件)を提起するとともに、行訴法25条2項に基づき、本案事件の判決確定まで本件命令の執行停止を申し立てた。大阪地裁は、本件執行停止申立てを却下した。  
決定主文  1 本件申立てを却下する。
2 申立費用は申立人の負担とする。  
決定の要旨  1 行訴法は、処分の取消しの訴えの提起によっても処分の効力、執行又は手続きの続行を妨げないことを原則としつつ(25条1項)、「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」ことを要件として、例外的にその執行を停止することとしている(同条2項)。そして、「重大な損害」が生じるか否かの判断に際しては、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも考慮するものとされている(同条3項)。
2 本件命令の執行等により府に生じる損害について
ア 大阪府は、本件命令の執行等により、本件文書の手交に応じることは、実質的に従前の主張の撤回と謝罪の意思表示にほかならず、その事実を本案事件の勝訴判決後に取り消すことが不可能である旨主張する。しかし、本件文書の内容は、府労委が不当労働行為と認定したことを前提に府が同種行為を繰り返さないことを表明するに止まり、主張の誤りを自発的に認めて撤回したり、ましてや謝罪するものでないことは明らかである。手交に応じることで一定の心理的効果を受けることは否定できないが、本件命令は、文書の掲示ではなく、手交に止まっているから、その効果は限定的である。最終的に勝訴が確定すれば、文書の手交を余儀なくされたことは実質的にその意味を喪失する。そして、文書手交した事実自体を取り消し得ないことで府に生じる損害とはいかなるものかについての具体的疎明はなく、また、損害の内容が看過し難いとも、損害の程度が著しいとも認めがたく、回復が困難であるとも認めることもできない。
イ 府は、文書手交に応じれば、組合からの団交申入れに応じざるを得なくなり、これに応じれば本案判決において申立人が勝訴した場合でも、団交を行った事実を取り消すことはできないため、その実績をもとに教育合同から同様の団交申入れがあった場合にこれに応じないとすることが極めて困難になり、重大な損害を避けるため緊急の必要がある旨主張する。しかし、本案事件の敗訴が未だ確定したわけでないから、自己の主張があくまで正当と考えて、府労委から再度救済命令を受けて取り消し訴訟において敗訴する危険も甘受した上で、新たな団交申入れに対して同様の対応をとることはできるのであるから、損害の程度が著しいとも、回復が困難であるともいうことはできない。また、本件文書の手交を余儀なくされることにより、団交申入れを拒みにくくなる一定の心理的効果が仮に生じるとしても、これに応じるか否かは申立人の判断によるのであり、応じないことが困難になるとまではいえないから、団交を行うことによって、重大な損害が生ずることの疎明はない。
ウ 府は、文書手交に応じた場合、労組法適用者の組合員の割合が僅少であっても救済命令の申立てが可能となり、府教委の事務執行上、極めて重大な支障を生じるとして、重大な損害を避けるため緊急の必要がある旨主張する。しかし、労組法適用者の組合員を含む職員団体が救済命令の申立てを行うようになったとしても、それは本件命令が発令されたことによるものであって、本件命令の執行停止を受けられないため本件文書の手交を余儀なくされたこととは関係がないし、仮に救済命令申立てがあったとしても、申立人に生ずる負担は、府労委の手続に対応する労力を割かれる程度であり、これをもって、損害の程度が著しいとも、回復が困難であるともいうことはできない。
エ 府は、執行停止されない限り、本件命令に速やかに従わないことが客観的に違法とみなされ、府における正当な行政判断の継続性を侵害する上、組合のセンセーショナルな宣伝活動や抗議活動が継続し、事務執行に多大な支障が生じる旨主張するし、仮に本件命令に従えば、申立人が人事行政の基本方針に反する内容の文書を手交することになり地方公共団体としての信用性を著しく害するとして、重大な損害を避けるため緊急の必要がある旨主張する。しかし、本件命令は、暫定的に組合との間で不当労働行為該当性を争えなくする効果はなく、本件命令の取り消しを求めて争っている以上、府が正当と考える行政判断を継続することを何ら妨げない。教育合同の活動により申立人の事務執行に多大な支障が生じるとの疎明もないし、仮にその活動が活発化するとしても、それは本件命令が発令されたこと自体の影響によると認められ、本件命令の執行により本件文書の交付を余儀なくされることとは関係がない。また、本件文書の手交を命ずる本件命令に従わないことが客観的に違法とみなされ、仮に本件命令に従えば地方公共団体としての信用性を著しく害すると主張する点についても、労組法28条によれば、本件命令が確定判決によって支持されるまでは罰則の制裁を課されることはないし、申立人が本案事件で勝訴すれば終局的に本件命令の効力を取り消すことができることからすれば、本件命令の執行を現時点で停止しなければ重大な損害が生ずるとは認め難い。
オ 申立人は、緊急命令の申立てがある場合、その必要性を判断するについて、謝罪文や誓約文の手交等を命じる救済命令については使用者側に回復の困難な損害を被るおそれがある場合に当たると解されているところ、この点については緊急命令の申立てが未了の場合であっても同様である旨を主張する。しかし、本件文書は謝罪や誓約を内容とするものではないから、その前提を異にするし、緊急命令の申立てが未了の場合は上記エで述べたとおり、本件命令が確定判決によって支持されるまでは罰則の制裁を課されることはないのに対し、緊急命令は過料の制裁により履行が間接的に強制されるのであり(労組法32条)、緊急命令の申立てがされている場合と同様に考えることはできず、申立人の上記主張は採用できない。
カ なお、申立人は、本件命令第2項を執行すべき緊急の必要性がないと主張するが、執行停止の判断の際に同事項の有無を考慮する必要はないから、申立人の上記主張は採用できない。
キ 以上のとおり、本件命令の執行等により生ずる損害に関する申立人の主張は、いずれも理由がない。その他、一件記録を精査しても、本件命令の執行等によって申立人に重大な損害が生ずるおそれがあるとは認められず、それを回避するための緊急の必要性もまた認められない。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第77号 一部救済 平成25年12月20日
大阪地裁平成26年(行ウ)第8号 棄却 平成26年7月23日
平成26年(行コ)第148号 棄却 平成27年1月29日
 
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