労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁平成27年(行ウ)第343号
大阪広域生コンクリート協同組合外7社 中労委再審査申立棄却命令取消請求事件 
原告  X1労働組合関西地区生コン支部 
原告  X2労働組合総連合関西地方総支部生コン産業労働組合  
原告  X3労働組合関西地方大阪支部(X1、X2と併せて「組合ら」) 
被告  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被告補助参加人  Z1協同組合 
被告補助参加人  Z2株式会社 
被告補助参加人  Z3株式会社 
被告補助参加人  Z4株式会社 
被告補助参加人  株式会社Z5 
被告補助参加人  Z6株式会社 
被告補助参加人  Z7株式会社 
被告補助参加人  Z8株式会社(Z2からZ7と併せて「セメントメーカー7社」) 
判決年月日  平成28年4月28日 
判決区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 組合らは、Z1及びセメントメーカー7社に対し、それぞれ団体交渉を申し入れたところ、補助参加人らはいずれも団体交渉を拒否した。組合らは、これらの団体交渉拒否が、労働組合法7条2号の不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会に救済を申し立てたところ、大阪府労委は、補助参加人らは組合らの組合員の労組法上の使用者に該当しないとして申立てをいずれも却下した。
2 組合らは、本件各初審命令を不服として中央労働委員会に対し再審査を申し立てたところ、中労委は、補助参加人らの使用者性に関する大阪府労委の判断を維持した上で、本件各初審命令に係る組合らの各救済申立てをいずれも棄却した。
3 組合らは、これを不服として、東京地裁に本件再審査命令の取消しを求める行政訴訟を提起したが、同地裁は、組合らの請求を棄却した。 
判決主文  1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告らの負担とする。  
判決の要旨  第4 当裁判所の判断
1 労組法7条の「使用者」の概念について
(1) 労組法7条2号の不当労働行為が成立するには、労働組合から団体交渉を申し入れられた者が、労働組合が代表する労働者の「使用者」であることが必要である。労組法7条にいう「使用者」とは、一般に労働契約上の雇用主をいうが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、上記事業者は同条の「使用者」に当たると解するのが相当である(最高裁平成7年2月28日判決・民集49巻2号559頁参照)。
(2) 組合は、「現実的かつ具体的な支配力」という要件を厳格に解すべきではなく、当該労働関係において、不当労働行為法を必要とするほどの実質的な支配力ないし影響力を及ぼしうる地位にあるかどうかで判断すべきである旨主張する。
  しかしながら、労組法7条の使用者とは、労組法が助成する団体交渉を中心とした団体的労使関係の当事者としての使用者を意味する独自の概念とはいえ、労使関係は雇用関係を基盤として成立するものであり、同条2号の文言上も、「使用者が雇用する労働者」の代表者との団体交渉の拒絶を不当労働行為としていることに照らすと、同条の使用者というには、当該労働者の基本的な労働条件等に対し、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している者であることを要するというべきである。同条の使用者とされた者は、誠実に団体交渉に対応することを求められ、これを拒否したときは同法27条の12の規定による救済命令の名宛人となり、不当労働行為の責任主体として不当労働行為によって生じた状態を回復すべき公法上の義務を負担し、確定した救済命令(同法27条の13)を履行しないときは過料の制裁(同法32条)を受ける地位に立つことになるのであり、組合が主張するような解釈は、雇用関係による限定を超えて、使用者概念の外延を不明確にするものであるから採用することができない。
2 Z1の使用者性について
(2) 以上の認定事実を前提に、Z1の使用者性について検討する。
ア 本件団交事項1に係る本件団交拒否がされた平成23年当時、Z1は、組合らの組合員と労働契約を締結していなかったし、組合らの組合員との間で労働契約の存否が争われている関係にもなかった。したがって、Z1と組合らの組合員との間には、労働契約又はこれに近接する関係は存在しないから、Z1が労組法7条の「使用者」に該当するということができるためには、前記したとおり、少なくとも、Z1が組合らの組合員である労働者を自己の業務に従事させ、その基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視することができる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったことが認められる必要がある。
イ そこで、まず、生コンの共同受注・共同販売体制におけるZ1と組合員企業との関係を通して、その使用者性を肯定することができるか否かについて検討する。
(ア) 前記認定したとおり、Z1は、組合員企業の製造する生コンの共同販売をその事業として行い、自ら生コンの注文を受け、それを生産能力や出荷実績に基づきあらかじめ理事会で決めたシェア(割当率)に従って組合員企業に割り当て、組合員企業は、割り当てられたシェアによる分量の生コンを製造し、これをZ1が販売するという共同受注・共同販売を行っていた。Z1は、生コンの共同受注・共同販売という自らの事業において、組合員企業の製造する生コンの販売を行っていたものであるから、組合員企業の労働者は、その限りにおいてZ1の事業に関わっていたということができる。
(イ) しかし、共同受注・共同販売の下、Z1が組合員企業に対し決定権を持つのは、①シェア(割当率)及びシェアによって決まる組合員企業の生コン生産量、②組合員企業に支払われる生コンの価格、並びに、③組合員企業が製造すべき生コンが国家の規格に適合する品質であることのみであり、どこからどのような原材料を幾らで仕入れてどのように配合して規格に適合する品質の生コンを製造するか、雇用する労働者とどのような労働条件により生コン製造に従事させるかについては、組合員企業が独自に決定すべきもので決定権を専有しており、Z1は組合員企業に対する決定権を持たないから、Z1による共同受注・共同販売下の組合員企業の労働者の基本的な労働条件について、Z1が雇用主である組合員企業と同視することができる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているとまでは認められない。
(ウ) 組合らは、「組合員企業がZ1の決定した生コン価格やシェアの割当てを度外視して労働条件を決定することができず、Z1が組合員企業の反対にもかかわらず生コンの大幅な値引き販売を行ったことにより、組合員企業の経営状況が現実に悪化し、労働者の雇用や賃金等の労働条件に重大な悪影響を及ぼしている。」とも主張するが、仮にその主張のとおりだとしても、それは、結局、Z1が行った生コンのシェアや価格の決定が、組合員企業が自ら行う労働条件についての判断、決定に対して影響を与えているというだけで、Z1が、組合員企業の労働者の具体的な労働条件そのものを支配し、決定しているわけではない。前記したとおり、労組法7条2号の「使用者」というには、単に労働者の労働条件に影響を与える地位にあるというだけでは足りず、労働者の労働条件を部分的にせよ雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあることが必要であるというべきであるから、組合らの主張は、Z1が、組合らに加入している労働者の「使用者」であることを認めるに足りるものではない。
ウ 次に、Z1と経営者会との関係を通して、Z1に使用者性が認められるか否かについて検討する。
(ウ) そこで、まず、経営者会とZ1の団体としての実質的同一性について検討するに、前記認定したとおり、平成23年9月当時、Z1の全組合員企業に占める経営者会の会員企業の割合は約3割にすぎず、経営者会の会員が必ずZ1の組合員企業であるわけではなく、Z1の理事26名のうち、経営者会の役員を兼務する者は2名に過ぎなかったことが認められる。経営者会の第14回通常総会議案書(平成23年6月3日付け)には、経営者会は、Z1が組合員企業の労働問題についての労組の窓口として設立・誕生させた団体で、労働条件全般についてZ1の利益代理人としての役割を果たしてきた旨の記載があるが、前記したZ1の組合員企業に占める経営者会の会員企業の割合等に照らせば、本件団交事項1に係る本件団交拒否が行われた当時において、経営者会がZ1の組合員企業の労働組合との窓口であったと評価するに足りるだけの実質的な同一性は認められない。
(エ) 次に、経営者会と組合らとの間の団体交渉に係る事項とZ1との関係について検討するに、確かに、経営者会と組合らが締結した19年協定で決定した袋洗浄の廃止については、Z1の理事会で確認がされ、その実現に向けて、組合ら、経営者会及びZ1で構成する検証委員会が設置されたこと、平成21年春闘における21年確認書の経営者会の組合らへの回答内容は、Z1の決議を経たものであり、21年確認書での経営者会の回答内容は、要求③の土曜稼働及び袋洗浄の廃止のように労働者の労働条件に関わる内容を含んでいたことが認められる。
  しかし、経営者会が組合らと締結した協定や確認書の内容が、Z1の理事会で確認を経たものであったり、同協定の内容の実現についてZ1が検証していたりしたのは、その内容が、経営者会の会員企業であるZ1の組合員企業のみならず、会員企業以外の組合員企業にも影響を与える内容であったからであり、Z1が当該事項について実質的な決定権を有していたからではない。経営者会と労働組合との間の交渉に係る労働条件の内容が、いわゆる政策事項として、他の同業者にも影響を与える内容を含んでいた場合において、経営者会が、交渉妥結に当たり、関係団体であるZ1の意向を確認したり、Z1が経営者会と労働組合との間で妥結された事項の実施に協力していたからといって、これによりZ1が、雇用主と同視することができる程度に組合らの組合員の労働条件を支配し、決定していたということはできない。Z1は、組合員企業が雇用する労働者の労働条件の決定や組合員企業のための団体交渉をその事業とするものではなく、組合員企業が自ら又は経営者会に委任して労働組合との間で行うべき団体交渉について何らの決定権限も有しない。したがって、Z1の意向は、経営者会が受任した交渉権・妥結権の行使に当たり、事実上、尊重されるものにすぎず、また、妥結された事項の実施についてZ1の協力がいかに不可欠のものであったとしても、これらをもって、Z1が組合員企業の労働者の労働条件を雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできない。
3 セメントメーカー7社の使用者性について
(2) 以上の認定事実を前提に、セメントメーカー7社の使用者性について検討する。
ア 本件団交拒否がされた平成23年9月又は平成24年7月当時、セメントメーカー7社は、いずれも組合らの組合員と労働契約を締結していなかったし、組合らの組合員との間の労働契約の存否が争われている関係にはなかった。したがって、セメントメーカー7社が労組法7条の「使用者」に該当するということができるためには、前記したとおり、少なくとも、セメントメーカー7社が組合らの組合員である労働者を自己の業務に従事させ、その基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視することができる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったことが認められる必要がある。
イ しかるところ、セメントメーカー7社は、生コン製造業者に対し原料であるセメントを販売する関係にあるが、生コン製造業者の労働者を自己の業務に従事させることはない。セメントメーカー7社は、生コン製造業者に対し、生コンの原料であるセメントを供給する立場にあり、その供給価格の決定や販路を通じて、生コン製造業者の経営に影響力を有すると考えられるが、このような影響力をもって、セメントメーカー7社が、生コン製造業者の労働者の基本的な労働条件等について、雇用主である生コン製造業者と同視することができる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいうことはできない。
  したがって、セメントメーカー7社は、本件団交事項2につき組合らの組合員の「使用者」であるとは認められない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
第1事件:大阪府労委平成24年(不)第4号 却下 平成25年9月10日
第2事件:大阪府労委平成24年(不)第67号 却下 平成25年9月10日
中労委平成25年(不再)第67・68号 取消棄却 平成26年12月3日
東京高裁平成28年(行コ)第195号 棄却 平成28年12月21日
 
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