労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成27年(行コ)第321号
ミトミ・ミトミ建材センター不当労働行為救済申立棄却命令取消請求控訴事件 
控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
補助参加人  株式会社Z1 
補助参加人  有限会社Z2 
被控訴人兼控訴人  Y労働組合関西地区生コン支部(「組合」) 
判決年月日  平成28年5月26日 
判決区分  原判決一部取消・棄却  
重要度   
事件概要  1 本件は、Z1及びZ2が、①組合に加入したZ1の従業員C2に対し、組合加入に関する発言を行ったこと(Z1及びZ2の取締役であるC1の発言並びにZ1の取締役であるC3の発言)、②組合加入公然化直後からC2の土曜日の就労を拒否したこと、③組合との事前協議を経ることなく就業規則の変更を行ったこと等が不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労働委員会は、Z2はC2の労組法上の使用者に当たらないとして、同社に対する申立てを却下した上で、C1発言及びC3発言は労組法7条3号の不当労働行為に、本件土曜日就労拒否は同条1号及び3号の不当労働行為にそれぞれ当たるとして、Z1に対し、①本件土曜日就労拒否に係るバック・ペイ及び今後の土曜日就労拒否の禁止、②文書手交(本件C1発言及び本件C3発言並びに本件土曜日就労拒否に関して)を命じ、その余の申立てを棄却した。
3 これを不服として組合及びZ1がそれぞれ中央労働委員会(以下「中労委」という。)に再審査の申立てを行ったところ、中労委が、組合の再審査の申立てを棄却するとともに初審命令のうち土曜日就労拒否に係るバック・ペイ及び今後の土曜日就労拒否の禁止、文書手交の部分を取り消し、同部分に係る不当労働行為救済命令の申立てを棄却する旨の命令を発した。
4 これを不服とした組合が、行政訴訟を東京地裁に提起したところ、同地裁は、中労委が発した命令の一部を取り消し、組合のその余の請求を棄却した。
5 これを不服として、組合及び国は東京高裁に控訴を提起したが、同高裁は、原判決の一部を取り消すとともに、組合の控訴を棄却した。 
判決主文  1 一審被告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
2 中央労働委員会が、中労委平成23年(不再)第14号及び同第15号併合事件について平成24年11月21日付けで発した命令中、主文1のうち大阪府労働委員会が大阪府労委平成21年(不)第65号及び同第78号併合事件について平成23年1月26日に発した命令中、平成20年11月27日の一審被告補助参加人株式会社Z1取締役C1の一審原告組合員C2に対する発言に関する部分、及び同C3の前記C2に対する発言に関する部分をそれぞれ取り消し、同部分についての一審原告の一審被告補助参加人株式会社Z1に対する救済命令の申立てを棄却した部分を取り消す。
3 一審原告のその余の請求を棄却する。
4 一審原告の本件控訴を棄却する。
5 一審被告の控訴については、訴訟費用(補助参加によって生じた費用を除く。)は、第1、2審を通じてこれを9分し、その2を一審被告の負担とし、その余を一審原告の負担とし、一審被告補助参加人株式会社Z1の補助参加によって生じた費用は、第1、2審を通じてこれを9分し、その2を一審被告補助参加人株式会社Z1の負担とし、その余を一審原告の負担とし、一審被告補助参加人有限会社Z2の補助参加によって生じた費用は第1、2審を通じて一審原告の負担とし、一審原告の控訴については、控訴費用は一審原告の負担とする。  
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、組合の請求は、本件命令中、府労委がC1発言及びC3発言を不当労働行為と認め発した救済命令を取り消して組合の救済命令申立てを棄却した部分の取消しを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきであると判断するが、その理由は、原判決を次のとおり補正し、次項に当審における当事者の主張に対する判断を示すほか、原判決の「事実及び理由」第3の1ないし9に記載のとおりであるから、これを引用する。
(原判決の補正)
(1) 原判決124頁20行目冒頭から128頁5行目末尾までを次のとおり改める。
  「 以上の一審原告とZ1の間のやりとりを前提として、Z1の対応が誠実に団体交渉に対応したものといえるかをみるに、Z1は、一審原告の要求する事前協議及び事前合意の協定化については、終始一貫してそれはできない旨回答しているが、C2の個別の労働条件については、第1回団体交渉から実質的な協議には応じて説明をしており、C2の労働条件の改善が交渉事項の一つとなった第2回団体交渉以降においても、事前協議にこだわる一審原告に対し、C2の個別の労働条件についての話に入ろうと持ちかけていたものである。一審原告は、これに対し、Z1がC2の個別の労働条件の話を持ちかけても、それには入らずに、C2の労働条件についてはC2とまず協議してから一審原告と協議するとのZ1の基本的姿勢の撤回を求めて、事前協議及び事前合意の協定化に固執していたものである。そうすると、C2の労働条件等についてはまずC2に話をし、その後に一審原告から団体交渉の申入れがあれば応じるとの趣旨のZ1の回答は、あくまで一審原告の要求する事前協議及び事前合意には応じない趣旨を明らかにしたものにすぎず、一審原告側から労働条件等に関する具体的な団体交渉の申入れがあっても、契約当事者であるC2との協議がなければそれには応じない趣旨を含むものではないというべきである。
  前記のとおり、使用者が、労働条件等の変更に当たって労働組合との事前協議及び事前合意の協定化を拒絶する立場を表明し、それを維持したからといって、これが直ちに団体交渉の拒否に当たるものではない。上記のとおり、Z1は、第2回団体交渉以降において、C2の労働条件に関し問題となった事項について、Z1の立場で回答をし、また団体交渉を行う姿勢を示しているから、第2回ないし第4回団体交渉におけるZ1の対応が、団体交渉の拒否ないし不誠実交渉に当たるということはできない。
ウ したがって、Z1の前記回答が団体交渉の拒否ないし不誠実交渉に当たるとする一審原告の主張は採用することができない。
(4) 支配介入への該当性
  Z1が、一審原告との事前協議及び事前合意には応じない、C2の労働条件等についてはまずC2に話をし、その後に一審原告から団体交渉の申入れがあれば応じるとの趣旨の回答をしたことが不当労働行為である支配介入に該当するかについて検討する。
ア 一審原告は、Z1の上記回答は、労働組合である一審原告に加入し自己の労働条件に関する交渉を労働組合に委ねることによって労働条件の維持・向上を図ろうとするC2にとって、労働組合よりも先に使用者であるZ1と対応することを余儀なくさせるものであり、一審原告を嫌悪し、労使交渉における一審原告の役割を低下させるものであって、一審原告の弱体化を図るものとみるのが相当であり、支配介入に当たると主張する。
  ある行為が支配介入に当たるか否かについては、前記のとおり、当該行為の内容や態様、その意図や動機のみならず、行為者の地位や身分、当該行為がされた時期や状況、当該行為が組合の運営や活動に及ぼし得る影響を総合考慮し、組合の結成を阻止ないし妨害したり、組合を懐柔し、弱体化したり、組合の運営・活動を妨害したり、組合の自主的決定に干渉したりする効果を持つものといえるかにより判断すべきである。
  そこで、この点について、Z1の前記回答を検討する。
  まず、前記(3)で認定したとおり、Z1の前記回答は、一審原告との事前協議及び事前合意には応じないが、C2の労働条件等について、C2と話をするまでは、一審原告からの団体交渉にはおよそ応じない趣旨を含むものではなく、Z1の前記回答は、団体交渉の拒否ないし不誠実交渉には該当しない。
  また、Z1は、C2と先に交渉するといっても、実質的にはC2に労働条件等の内容を知らせた上で一審原告に相談するように促し、必要があれば一審原告と協議して団体交渉事項とすることもいとわない姿勢を示しており、この点は、一審原告に対する関係で事前協議及び事前合意には応じないZ1の基本姿勢を貫徹する限度においてされているものと評価できる。
  そして、現に第2回ないし第4回の団体交渉においても、C2の労働条件等については、Z1の側から実質的協議に入ることを申し入れ、内容について問われた際には回答をしており、C2の労働条件等についていつでも団体交渉に応じる姿勢を示しているといえる。
  そうすると、このようなZ1の対応は、組合の結成を阻止ないし妨害したり、組合を懐柔し、弱体化したり、組合の運営・活動を妨害したり、組合の自主的決定に干渉したりする効果を持つものとはいえないから、Z1の前記回答が支配介入に当たるということはできない。
イ なお、原審が支配介入を判断するに当たって言及した組合の統制権について触れると、労働組合は、憲法28条による労働者の団結権保障の効果として、その目的を達成するために必要であり、かつ合理的な範囲内において、その組合員の行動を規制する統制権を有するものと解される(最高裁昭和43年12月4日大法廷判決・刑集22巻13号1425頁参照)が、かかる統制権はその性質上、基本的には、各組合員の行為を組合活動との関係でどこまで制約し得るかという観点からそのあり方が問題となるものであって、本件のように、労働組合が使用者に対して団体交渉を申し入れた場合において、使用者が労働者である個々の組合員と個別に協議・交渉を行うことの適否については、端的に労働組合法上の不当労働行為等に該当するか否かを問題とすれば足りる。
ウ なお、一審原告は、平成15年に締結された本件事前協議協定は、本件交渉申入れ当時も有効であってC2にも適用されると主張するが、後記7(2)で判示するとおり、本件事前協議協定は、本件交渉申入れ時には効力が消滅していたと解されるから、一審原告の主張は採用することができない。
エ 以上によれば、Z1が事前協議及び事前合意には応じない、C2の労働条件等についてはまずC2に話をし、その後に一審原告から団体交渉の申入れがあれば応じるとの趣旨の回答をし続けたことは、労組法7条2号の禁止する団体交渉の拒否ないし不誠実交渉にも該当しないし、また、同条3号の禁止する支配介入にも該当しないというべきである。」
2 当審における当事者の主張に対する判断
(1) 争点(1)(Z2の使用者性)について
ア 組合は、本件手帳によれば、C2は、日々の大半の業務を、Z2に出向していたC4の直接の指揮命令下で行っていたことが認められるから、Z2が雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的にC2の業務を支配、決定することができる地位にあったことは明らかであり、Z2はC2の使用者に当たると主張する。
  しかしながら、本件手帳のプラント準備、プラント洗い、プラント整備に係る記載内容を採用することができないことは、原判決の説示(57頁21行目から71頁10行目)のとおりである。そして、Z2には、Z1からC4のほか4名が出向しており、C2は、プラント関連業務が生コン出荷業務と関連性があることから、事実上プラント関連業務を行っていたことがあるにとどまり、本件手帳の記載から、C2が日々の大半の業務をZ2に出向していたC4の直接の指揮命令下で行っていたことは認められず、Z2が雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的にC2の業務を支配、決定できる地位にあったとは認められないから、組合の主張は採用することができない。
(2) 争点(2)(C1発言が労組法7条3号の支配介入に該当するか)
ア 中労委は、C2は、組合らの不法行為を見聞きし、組合に同調しておらず、Z1側の人間というべきであって、組合に対し強い批判をしていたものであり、また、C3を含むZ1の取締役らと良好で親しい間柄であったから、そのようなC2の組合加入が公然化されたことはC1にとっては正に驚愕すべき事態であるから、C1発言は、不法行為を繰り返していたという組合に帰責されるべき過去の経緯を踏まえて、C2を憂慮する心情からされたものであると見るべきであると主張する。
  しかし、原判決も認定するとおり、C2が組合の活動に強い批判をしていたことを認めるに足りる的確な証拠はなく、仮にC2を憂慮する心情からされた部分はあるとしても、逆にいえば、C1発言は、C1の組合に対する強い批判意識によってされた面があることを自認しているものということができる。したがって、中労委の上記主張は採用することができない。
(3) 争点(3)(C3発言が労組法7条3号の支配介入に該当するか)
 C3発言は、C2が組合への加入を公然化した当日である平成20年11月27日、C3が、Z1の工事現場に押しかけた組合組合員らの行動を証拠保全のためビデオ撮影しようとし、組合員らとの口頭での応酬があった後、一度Z1本社事務所に戻り、そこから上記工事現場に向かうC2運転のミキサー車に乗り込んだ上でされた発言である(原判決82頁6行目から83頁5行目)ことからすれば、直接組合を批判するような内容は含まれていないものの、C2の組合への加入の経緯を殊更探ろうとしてされたものであって、C2としては、工事現場に押し掛けている組合組合員と同調する者として組合への加入を非難されていると受け取り、組合活動を萎縮させる可能性が十分あるものであるから、労組法7条3号の禁止する支配介入に当たるというべきである。そして、C3発言には、C2の不満をくみ上げるための具体的な労働条件等に関する質問は何ら含まれていないから、C2の不満を少してもくみ上げようという心情に基づいてされたものであるともいえず、中労委の主張は採用することができない。
(6) 争点(6)(本件交渉申入れに対するZ1の対応は労組法7条2号の禁止する団体交渉の拒否ないし不誠実交渉、同条3号の禁止する支配介入に該当するか否か)
ア 支配介入について
  組合は、第1回団体交渉後、Z1に対し、C2の労働条件の改善を求め、直ちに組合と協議して解決を図ること及びC2と直接交渉をしないよう申し入れたにもかかわらず、Z1は、C2に対して直接本件契約書を提示して署名押印を求めており、これは、原審が判示する「仮に組合側から労働条件等に関する具体的な団体交渉の申入れがあっても、C2の労働条件等については契約当事者であるC2との協議を先行し、その後に申入れがあれば団体交渉に応じる」というZ1の誤った基本姿勢を示すものであり、このような基本姿勢に基づくZ1の一連の対応は、労働組合である組合に加入し、自己の労働条件に関する交渉を労働組合に委ねることによって、労働条件の維持・向上を図ろうとするC2にとって、労働組合よりも先に使用者であるZ1と対応することを余儀なくさせるものであって、組合を嫌悪し、労使交渉における組合の役割を低下させるものとして、組合の弱体化を図るものとみるのが相当であり、労組法7条3号の禁止する支配介入に当たると主張する。
  しかしながら、C1は、本件契約書をC2に示すにあたり、C2が組合組合員であるから署名押印に応じられないであろうとして、本件契約書の内容をよく読んで覚えるか、メモをして組合に相談することを求め、交渉することがあればお互いに日時を相談して団体交渉をすることとしているのであって、Z1の意向としては、事前協議及び事前合意の協定化を拒否する関係上、C2の労働条件等についての事前協議は認めないものの、C2との間で組合を介入させない実質的な協議を求めるものではなく、むしろC2が組合と相談した上で、組合との団体交渉を行うことを積極的に容認しており、そのことは第2回ないし第4回の団体交渉において、C2の労働条件等について具体的に交渉に応じていることからも明らかである。したがって、Z1の上記基本姿勢は、組合を嫌悪し、労使交渉における組合の役割を低下させるものとして、組合の弱体化を図るものとみることはできないから、支配介入に該当するということはできない。
  したがって、組合の主張は採用することができない。
イ 団体交渉拒否及び不誠実対応について
  組合は、Z1の対応が支配介入に当たることを前提として、Z1の対応が不誠実交渉に当たると主張するが、前記のとおり、Z1の対応が支配介入に当たるとはいえないから、組合の主張はその前提を欠き、採用することができない。
(9) 争点(9)(本件カメラの設置が労組法7条1号の不利益取扱い、同条3号の支配介入、同条4号の本件救済命令申立てを理由とする不利益取扱いに当たるか)
  組合は、①C2は、組合加入公然化の日に、生コンプラントを施錠されて生コンプラントのメンテナンス業務を奪われ、その後、本件ミキサー車を売却され、ミキサー車乗務の業務とそれまでの待機場所(ミキサー車の運転席)を奪われたが、Z1の事務所は、C2が倉庫整理を命じられた時点で既にオートロックがかけられ、事務所内には、C2を敵視して暴言や不当労働行為発言を投げかけるC13社長らがおり、このような環境の中では、C2に待機する場所は倉庫以外にはなく、②発電機の盗難に遭ったのであれば、Z1は盗難届を出すはずであるが、そのような事実はないし、倉庫で備品を見ているC2が盗難の事実を全く知らないということもあり得ず、③平成21年2月や同年夏に盗難の事実があったにもかかわらず、数か月後の同年12月に突如として防犯目的にカメラを設置するのは不自然であって、盗難の事実があったとは認められない等と主張する。
  しかしながら、Z1事務所内において、C13らがC2に対し暴言や不当労働行為発言を投げかけていたと認めることができないのは、前記認定(原判決139頁23行目から140頁6行目)のとおりであって、C2の待機場所が倉庫以外になかったと認めることはできない。
  また、盗難届を出したとしても、盗まれた時期等が全く不明であれば、盗難品が戻る可能性は低いといわざるを得ないから、そのような場合には盗難届を出すとは限らず、また、C2が倉庫に待機して備品を見ていたからといって、業務上、在庫品の種類や個数を完全に把握していたわけではないから、盗難の事実を知り得るとは限らない。
  さらに、本件カメラの設置時期が、本件救済命令申立ての時期に近接しているからといって、直ちにC2の行動の監視目的をもって本件カメラが設置されたと認めるには足りない。
  したがって、組合の主張はいずれも採用することができない。 
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成21年(不)第65号・第78号 一部救済 平成23年2月28日
中労委平成23年(不再)第14号・第15号 一部変更 平成24年11月21日
東京地裁平成25年(行ウ)第341号 一部取消 平成27年8月28日
最高裁平成28年(行ツ)第296号・平成28年(行ヒ)第353号 上告棄却・上告不受理 平成29年3月10日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約295KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。